群馬県の南西端に位置する上野村は人口1041人(3月1日現在)の約2割をⅠターン者が占め、過疎の進行を留めている全国でも珍しい村。面積の95%以上が森林という環境を活かし、木質バイオマスエネルギーの地産地活を基に魅力ある村づくりを多彩に実践している。
上野村は持続する地域社会への長期ビジョンを掲げ、それらを支える一つが教育である。上野村の小中学校に通いながら、かじかの里学園で共同生活をする山村留学は30年以上継続している。
上野村小学校の全児童58人の内、13人が山村留学。黒澤八郎村長は「山村留学の人数を増やす努力も必要だが、一緒に学ぶ村の子供たちとのバランスも重要」と語る。外から来た子供たちと村の子供たちが切磋琢磨しながら人間力を高め、社会性を身につけていく。
今年度は「自分から」をキーワードに、子供たちが自から学ぶ力を育成できる授業を実践。梯直人校長は「国の教育の流れも自主性。授業だけでなく家庭学習でも先生が与える宿題ではなく、できない部分を自ら考え学ぶ姿勢で進めている」。
畑を借りての野菜作りや一日山を歩くなど学校行事も多い。教室には森林組合が作成した机と椅子があり、木工の出張授業もある。放課後は図書館での自習や、ドイツ人のケルナー氏考案の木製遊具で遊び、知力・体力も身につけていく。
村の人たちと子供たちでゲートボールをするなどの交流もあり、保護者や住民全員の温かいサポートが感じられた。
村内には校外学習として学べる施設も多い。国指定重要文化財の旧黒澤家住宅は19世紀中頃の建築。仕切りのない広い2階は養蚕に使用されていた。江戸時代、この地では将軍家に鷹狩りの巣鷹を献上していたが、その御林守で御巣鷹山を管理していたのが、代々大総代の黒澤家である。
十石峠に繋がる白井地区は江戸時代、米屋、宿屋、酒屋などがあり、定期市も開かれるなど繁栄していた。1631年には信州への往来取り締まりのために関所が設置。今は静かな集落だが、隠れキリシタンの遺物と思われる墓碑や初代関守の家に残るイチイの木(県指定天然記念物)、白井関所跡の碑などがある。
教育家庭新聞 新学期特別号 2024年4月15日号掲載