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教育旅行

教育旅行で「探究」実現~日修協 第17回教育旅行シンポジウム

2023年9月18日

修学旅行等の教育旅行はほぼコロナ禍以前のように実施されている一方で、物価高や民泊の受け入れ家庭の減少など、この3年間で修学旅行を取り巻く環境は大きく変化した。(公財)日本修学旅行協会は「これからの教育旅行~コロナ禍を経て『探究的な学習』をどう実現するか~」をテーマに「第17回教育旅行シンポジウム」を8月18日、日本科学未来館で開催。経費、時間などの制約が厳しい中で「満足できる」教育旅行のため、一層の工夫が求められることなどが話し合われた。

第3部パネルディスカッションの壇上風景

第3部パネルディスカッションの壇上風景

1部 基調報告

日本修学旅行協会の竹内秀一理事長は「どうなる!?これからの修学旅行」と題し、コロナ禍前後における修学旅行の変化と今後の展望について報告した。

旅行先の推移は、中学校はコロナ前後でも変わらずに京都・奈良が圧倒的に多い。高等学校は2020年度や21年度は、感染症患者数が多かった東京や千葉が大きく順位を下げるなど変更した学校が目立つ。

この数年間で修学旅行を取り巻く環境は大きく変化した。ガソリン価格や航空機の燃油サーチャージの高騰から旅行費用が上昇し、体験活動費を圧迫。また農山漁村民泊も高齢の家庭が多いため、コロナ禍以降は受入が困難になっている。

新しい学習指導要領では「探究」が重要なキーワードとなり、修学旅行も「探究的な学習」に適したプログラムのニーズが高まっている。今後、現地の人との交流など生徒の課題に対応したプログラムなどを修学旅行に取り入れていくことが求められる。

2部 学校・受入先からの報告

東京都府中市立府中第二中学校の成清敏治校長は「『探究する修学旅行』を考える」をテーマに、前任校・世田谷区立烏山中学校などの取組を報告した。同校は広島の修学旅行に向けて、中1の段階で総合的な学習の時間に地域調べを実施。自分は地域のために何ができるかを考え、地域を探索してボランティア案を作成。中2では地域とのつながりを深める職場体験を実施。そして中3の広島への修学旅行の事前学習では平清盛の時代(宮島)、毛利の時代(広島城)、昭和の時代(戦争・原爆)などのテーマを設定し、激しく移り変わる広島の様子を調べた。

調べた内容を現地で体験することが修学旅行の価値。広島では調べた場所を見学したことにより、自分の生き方に影響を与えたという声が生徒から聞かれたという。

晃華学園中学校高等学校の広報部長・宗教科主任の安東峰雄氏は「探究学習と教育旅行」をテーマに報告した。同校は「探究」のサイクルとして、①課題の発見、②分析、③実行、④見つめ直すの4つを何度も繰り返すことで深化させる。

3では沖縄の修学旅行を実施しているが、戦争の実態を知ることで平和の意味を考え、平和な世界を築くことにつなげていく。沖縄修学旅行に向けて、高12月~3月にキックオフのミーティング。高2の宗教科の授業で「島唄とひめゆり学徒隊」について学習。2学期の事前学習(LHR)ではドキュメンタリー映画の鑑賞、沖縄から講師を招いての講演など独特の修学旅行プログラムを実施。沖縄の共通認識を持った上で調べ学習に取り組んだ。

(一社)長崎国際観光コンベンション協会事業部部長の古賀典明氏は、修学旅行で活用できる教材として再作した「長崎SDGs平和ワークショップ」を紹介した。

同教材のポイントは①SDGs平和ガイドがサポートし、記憶に残る平和学習ができる、②学習シートを使って記録する平和学習ができる、③SDGsの視点を持って主体的・対話的な学びを実践できる、など。

同教材を活用する場合、オリエンテーション(510)ではプログラムの目的、目標とゴール、手順などを説明。続くグループワーク(70)では、各班を平和ガイドがサポートしながら、取り組むテーマとアクションプランを決め、ディカッションを進める。最後の発表とまとめ(1015)では他の班と意見を共有する。

3部 パネルディスカッション

府中第二中・成清校長、晃華学園・安東部長、長崎国際観光コンベンション協会・古賀氏と、㈱JTB企画開発プロデュースセンター教育企画担当の横田裕美氏が登壇し教育旅行の課題などが話し合われた。コーディネーターは竹内理事長。

府中第二中学校の成清校長は、特に公立では時間の設定が課題だとした。「限られた時間の中で提供されたプログラムを行っても、満足できる実践となるかは分からない。事前・事後を含めて修学旅行にあてられる時間が決まっており、その中で提案されたことを消化できるかが課題」と語る。

晃華学園の安東部長は、時間だけでなく場所の問題を挙げる。「ホテルや旅館に、100人~300人の生徒が集まって同時にグループワークを行える場所があるかが問題」と語る。

JTBの横田氏は、広島で実施している「PEACE QUEST」プログラムを紹介。同プログラムで出会う人を「観光人」と呼び、観光人が今の生き方に至った原体験を生徒が共有し、観光人が人生をかけて取り組んでいるプロジェクトに触れる。「生徒は観光人の実践に触れ、自分の生き方を見つめ直す機会を得る」という。

修学旅行における人と人のつながりについて、長崎国際観光コンベンション協会の古賀氏は「探究的な学習を進める際も、ただ一方的に話を聞くのではなく、相手と対話をすることが大事」と語る。

竹内理事長は「探究的な学習を実施する際は、どんな人たちと交流するかが生徒にとって次の学びにつながる。様々な制約や課題があるが、人との交流を大切にして新しい形の修学旅行を進めてほしい」と語りシンポジウムを終了した。

教育家庭新聞 健康・環境・体験学習号 2023年9月18日号掲載

 

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