教員対象「スチール缶製缶工場・リサイクル見学会」が、8月8日に実施され、教職員19名が参加した。参加者は、埼玉県さいたま市桜環境センター、東洋製罐㈱埼玉工場を見学し、スチール缶の特徴やリサイクルの意義を学んだ。主催はスチール缶リサイクル協会、日本製缶協会、(公社)日本缶詰びん詰レトルト食品協会、後援は全国小中学校環境教育研究会、東京都小中学校環境教育研究会、協力は教育家庭新聞社。
さいたま市の桜環境センターは、市内17万世帯から回収されたごみ・資源の処理施設。ごみ焼却時の熱エネルギーを利用して発電するなど、地域の「循環型社会」を構築する。熱回収施設とリサイクルセンターがあり、1日あたり180台のごみ収集車が集まる。
熱回収施設には、ごみの焼却と高温溶融の機能が一体となった「シャフト炉式ガス化溶融炉」がある。約1800℃の高温で、ごみやリサイクルセンターからの残渣(ざんさ)を処理。その後に発生する可燃性ガスの熱エネルギーで蒸気を作り、発電する。1日あたり最大8700キロワット発電でき、同センターで使用するほか、市役所や市施設でも使用するなど、電気の地産地消を実現している。
処理後に発生する溶融物からは高品質なスラグとメタルが作られ、道路舗装等に利用される。同センターでは、ごみの80%が気化し、20%は溶融物等になる。溶融物のほとんどは再利用され、ごみから電気やスラグ等を生み、効率的なエネルギー循環を実現している。
リサイクルセンターでは、燃えないごみや粗大ごみを細かく破砕し、資源物を回収。ペットボトルやびん、缶は、機械や手作業で選別。磁石にスチール缶を引きつける時と高速回転する磁石により発生する反発力を利用してアルミ缶を取り出す時は磁選機で選別する。
びんは、手作業で茶色・白・その他に選別。機械よりも効率が良いという。ただ、分別ができていないと混入物により作業員がけがをする恐れがある。同センターを運営する㈱エコパークさいたまの川合康之総務部長は、「リチウムイオン電池が燃えないごみに混ざり、過去に施設で火災が起こった。ごみ・資源の分別ができていないとけがや火災につながりかねない。安全のために市民へ分別の徹底を呼びかけたい」と語った。
管理棟には処理の熱を利用した大浴場やウォーキングプール、環境保全や資源の重要性について学ぶ環境啓発施設やカフェも設置されている。
質疑応答では「なぜこのような総合的な施設をつくったのか」との質問に、川合氏は「今後人口が増え、埋立て処分場が不足することや、プラスチックごみが増加すること等を見据え、ごみ問題や環境問題を考え、また市民が喜ぶ施設も併設したいという要望から誕生した」と答えた。
続いて東洋製罐㈱埼玉工場を見学した。同工場は1971年に設立された飲料容器専門の工場だ。今回、TULC(タルク)の製造工程を見学した。TULCとは、缶胴と蓋の2つから構成される缶で、缶の内外面にポリエステルフィルムを貼りつけてあり、従来使用していた潤滑剤を洗浄する水や乾燥用の熱を使わずに製造でき、水や二酸化炭素排出量を低減させ、環境負荷が小さくできる。
工場では、巨大なロール状の原料から缶胴が成型される様子や、缶胴に印刷が施され、コンベアーで運ぶ工程を間近で見学した。また複数の検査工程があり、精密なチェック体制の中で製造していることが分かった。
また工場内では、食品容器製造の性質上、異物混入等を防ぐため、見学用の衣類・フットカバー・キャップ等を装着し、念入りに身体についた毛髪、塵埃の除去を行った上で製造工場内へ移動。若手の技術者が、一つ一つの作業工程について、徹底した安全管理と衛生管理に基づいて製造されていること等を熱心に説明した。
同社の澤埜明修工場長は、「スチール(鉄)は再び缶になるのではなく、別の原料になることが多いが、様々な用途に使われるので再資源化しやすい」という。アルミ缶は再びアルミ缶を作る水平サイクルへの取組が進んでおり、ペットボトルも同様だという。
2つの見学場所の共通の課題は、ごみや資源の「分別」である。分別は子供たちが積極的に取り組める課題でもある。貴重な体験とともに、身近な課題から総合的な解決策までを考えられる充実した見学会となった。
教育家庭新聞 健康・環境・体験学習号 2023年9月18日号掲載