日本では世帯収入による大学進学の格差が広がっているが、オンラインによる大学設立によって将来の人材育成に貢献したいとの思いから、日本財団と㈱ドワンゴは6月1日、オンライン大学「ZEN大学」(仮称)の設立を目指し、「一般財団法人日本財団ドワンゴ学園準備会」を設置し、教育分野での包括提携を結んだことを発表。2025年4月開学に向け、文部科学省へ今年秋ごろの申請を目指すという。
新しい大学名「ZEN大学」(仮称)は海外にも認知されている東洋の英知である「禅」から。オンラインと社会体験を重視するといい、将来的には入学者は世界中を対象に想定している。年間授業料は38万円、初年度の入学定員は5000人という予定だ。
オンライン大学の意義についてドワンゴ顧問・角川ドワンゴ学園理事の川上量生氏は「繰り返し使用できる映像授業で、授業にかける時間を有効活用できる」、「教室の収容制限がないので、たくさんの学生が入学できる」ことから、学生が増えるほど「授業の質と量がUPする」と説明。学生のメリットは、「安価で質の高い授業が受けられる」、「好きな場所で学べる」、「好きな時間に学べる」、「繰り返し自分のペースで学べる」などから「多様な生活に合わせて柔軟に学べる」。これらのことから「全ての人に大学進学の機会を提供できる」とまとめた。
角川ドワンゴ学園はネットの高校「N高等学校」「S高等学校」を運営している。2016年から今年4月までに1万3000個近くの授業コンテンツを全て手作りで内製してきた実績がある。内容レベルも業界の評価は高い。オンライン高校として世界的にも最先端だといわれる。
同学園理事長・山中伸一氏は大学設立のねらいを、新しい教育システムを活用したオンライン大学の仕組みで、場所・時間の制約がないため、近隣に大学がない、経済的な理由などで大学進学をあきらめていた人にも進学の機会を広げることができると語った。
家庭の収入や地域による格差が拡大している。都道府県別の大学進学率で1位・東京は69・7%、2位京都67・2%、神奈川63・0%などに対し、最下位・鹿児島は36・1%で、差は2倍近くに達する。さらに国公立・有名大学への進学には早期からの進学校への入学が有利なので、塾・家庭教師などの教育費負担に耐えられる家庭の経済力が必要。高3生の進路調査では、世帯収入200万円未満家庭では国公立大が約20%だったが、1050万円以上では約50%だった。
日本財団は子供を取り巻く環境の支援実績が多い。その一つ「子ども第三の居場所」設置は2016年の埼玉・戸田市を皮切りに年々拡大、25年までに全国500拠点開設を目指す。
あいさつに立った笹川陽平会長は「最近は教育格差が深刻で大学進学をあきらめる人も少なくないが、最新のデジタル技術を持つN高等学校の実績を生かした、オンライン大学を2025年度開設目指す。日本は人こそ宝、財産であり、大学では将来を担う子供たちのためIT、AIの最高レベルの教育を施したい」と期待を込めた。
教育家庭新聞 健康・環境・体験学習号 2023年6月19日号掲載