2016年4月の熊本地震から6年、教育旅行でも多くの学校が親しんだ熊本城をはじめ、広範な地域に甚大な被害がもたらされた。しかし熊本城は2021年6月から天守閣の内部公開が再開されるなど、2037年の完全復旧を目指して取組は着々と進められている。同県が「復旧・復興、これからの熊本」と題して9月末に発表した「創造的復興」から、最新状況の一部を紹介する。
重要文化財建造物13棟全てと天守閣等の再建・復元建造物20棟全棟が被災した熊本城。同県のシンボルであるばかりでなく、教育旅行のメッカでもあった。
石垣の一部も崩落するなど大きな被害をうけたが、復旧が進み2020年6月から特別見学通路を活用して特別公開が始まり、さらに昨年6月には5年ぶりに天守閣の内部公開が再開、最上階からの眺めを楽しめるようになった。また来年度には重要文化財の監物櫓(けんもつやぐら)の復旧が完了する予定。完全復旧には2037年度が見込まれているそうだ。
地震による大規模な斜面崩壊で、阿蘇への主要ルートだった国道57号、325号阿蘇大橋が通行止めに。2020年10月に、絶景ルートで知られる57号現道部と、自動車専用道路として北側復旧ルートが同時開通した。
昨年3月には新阿蘇大橋が開通し、阿蘇方面への道路の復旧が完了。同じく斜面崩壊で不通だったJR豊肥本線は2020年8月に全線運行が再開。トンネルや橋梁に被害が発生し一部区間で運休している南阿蘇鉄道も今年度中に復旧工事が完了。来年夏頃までに全線運行再開とJR豊肥本線への乗り入れを目指すという。
来年3月23日開業を目指し建設工事が進む新旅客ターミナルビル。国内線・国際線が一体で、共用の滞在型ゲートラウンジや商業スペースが整備される。
隣接地には地域に開かれた商業施設が整備され、旅客機利用者だけでなく地域の人たちも楽しめる場となる。
2度の震度7の地震を経験した益城町は、倒壊した家屋等で県道がふさがれ、救助活動に支障が発生。そこで町内主要道路を4車線化し歩道を広く設けるなど2025年完成予定で整備中。58の町有施設中、48施設が被災したのを受け、被災後は防災機能を強化した区画整備事業を2027年度に完了予定。益城町復興まちづくりセンターは今年3月開所、益城町新庁舎は来春に完成が予定されている。
来年夏には、自然の脅威や災害への備えなどを学べる体験・展示施設を同キャンパス内にオープンする予定だという。
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熊本県は被災直後から「創造的復興に向けた重点10項目」を策定。震災を風化させることなく復旧・復興に力を注ぎ「誰一人取り残さないくまもとづくり」を掲げて取り組んでいる。
教育家庭新聞 健康・環境・体験学習号 2022年10月17日号掲載