昨年度は、修学旅行やスキー合宿など、多くの教育旅行が中止になった。実際の状況や、今後の教育旅行にどのような影響があるのか、また新しい展開の可能性について、日本修学旅行協会の高野満博氏に聞いた。
昨年度は新型コロナの影響で、修学旅行や社会科見学等の旅行行事が多くの学校で中止となり、児童生徒の皆さんが楽しみにしていた多くの行事が無くなってしまいました。特に、修学旅行は学校生活の中でも児童生徒にとって印象に残る行事の一つであり、校内では出来ない学びの機会が失われてしまったことは本当に残念でなりません。
また、実施できた多くの学校でも、当初の計画から見学先や体験内容、実施時期、方面等の変更や日程縮小等の対応を余儀なくされました。方面変更では、広域での移動を取り止め、近隣県や自県内での実施に切り替えた地域も数多くありました。
方面や内容を変更した学校では事前学習等で準備していたものが無駄になってしまい、改めてやり直した学校では、準備時間も無かったことから、目的としての学びを深く掘り下げることができなかったと伺っております。
ただ、実施した児童生徒からは、このような状況の中でも様々な感染対策をした上で実施に向けて取り組んでくれた先生や保護者、同じ学年の仲間、感染対策を入念にしてくれた受入施設や交通機関・旅行会社等の皆様への感謝の気持ちが、普段以上にあり、児童生徒にとっては、人への感謝という大きな効果があったと思います。そして、実施のために自分たちができること(実施前から実施中までの体調管理や手洗い・消毒、会話を控える等)にみんなで協力し、協働して修学旅行を安全に実施するという学校行事としての大きな成果があったと思います。
今年度は、修学旅行の行先として人気の高い地域が緊急事態宣言の対象となっており、一学期の修学旅行の実施もまた大きく影響を受けています。昨年度と異なるのは、文部科学省が引き続き実施についての特段の配慮を依頼しており、また学校の先生方は今年度こそは何とか実施してあげたいという気持ちが強いため、多くの学校で中止でなく延期の方向で対応していただいています。
昨年度は、修学旅行の中止が余儀なくされた学校で、その代替のプランとして「オンライン修学旅行」を実施した学校もありました。児童生徒の皆さんが現地で見学・体験する予定だった内容を映像やVRで見たり、地域や施設の方と教室をオンラインで結び実際に話を伺うなどして歴史や伝統文化などを学び、交流するものです。
しかし、オンライン修学旅行がリアルな修学旅行に全て置き換わる、ということは今後もないでしょう。現地に行って直接見て、感じて、人と触れ合い、様々な体験をすることには敵いません。
一方でWebやオンラインツールは、事前学習やキャリア教育などに大いに活用できることもわかりました。
昨年度多くみられたのは、Web会議システムを活用し、講師の方とオンラインで結び画面を通じて話を伺う取組です。小中高の校種を問わず、またクラス単位といった規模でも行われました。
引き受けて下さる講師にとっては、移動時間や距離等を気にせず容易に参加できること、学校側にとっては今までは近隣や地元で働く方を招いていましたが、国や地域を問わずさまざまな分野の方とつながれることが、大きなメリットとなっています。
今後は教育旅行の事前学習や職場体験でも、Webの活用は確実に広がっていくでしょう。
■東京立正高等学校では、3月に予定していた沖縄修学旅行が緊急事態宣言で中止。代わりとして「Remote(リモート)修学旅行 沖縄」を3月22日に実施。オンラインで3時間半にわたって東京の教室と沖縄の現地をつなぎ、平和講和やオリジナルシーサー作り等を体験
■都道府県をまたがない形で、教育旅行を実施する動きもあった。三重県では県内教育旅行促進支援事業を実施。県内の特定の地域を旅行先とする学校行事を対象にするもので、初年度となった2020年度はのべ836校が同事業の支援を受けた
■東京都内の小学校ではスキー合宿が中止に。訪問を予定していた地域の方からサプライズで小学校に雪が届けられた
教育家庭新聞 健康・環境・体験学習号 2021年6月21日号掲載