令和元年「北海道教育旅行説明会・相談会」(主催=公社・北海道観光振興機構)が12月10~12日に、学校関係者・旅行関連企業を対象に東京・名古屋・大阪の3会場でそれぞれ開催された。10日の東京会場では、4月24日に開設する民族共生象徴空間「ウポポイ」(北海道白老町)や北海道教育アドバイザーによるアイヌ民族についての講演、北海道新幹線の活用方法の解説が行われた。北海道の29団体による紹介スピーチや個別の相談会も実施。同機構の佐藤誠之事務局長は「2019年は734校が北海道に来てくれたので、札幌・帯広・釧路でも7つの空港をまとめて活性化させていきたい」と語った。
4月24日にオープンする民族共生象徴空間「ウポポイ」。現在も来年度の学校団体予約を受け付け中で、すでに300校以上の予約があった。
これを受け、阿寒アイヌ工芸協同組合の秋辺日出男専務理事がアイヌ文化の学習について解説した。北海道が江戸時代まで外国だったこと、函館以北がすべてアイヌの領土だったことなどを踏まえ、「日本は多民族国家だ」と説明すると子供たちは驚き、「おはよう」など普段自分たちが使う挨拶にも深い意味があると知ると喜びながら文化を学ぶ。
教科書のみの勉強では、子供たちはアイヌを「今も民族衣装しか身に着けていない」と思い込んでしまう。100年前そのままの暮らしをしているわけではないと伝えるためにも、遠方の土地でしか触れられない他民族の文化に触れる機会を提供することが重要だ。
また、海外では、「あなたは何の民族ですか。宗教・宗派は?」と尋ねられる機会が多いことにも注目。アイヌの人々がこの質問に「私はアイヌ民族。宗教は自然崇拝だ」と答えられることを知って、自分だったらどう答えるかを考える機会にもつなげる。
「国際化する一番のきっかけを子供たちの目の前に提供し、昔ながらの生き方でなくても『民族』は成立すると理解してもらうことが大切」と秋辺氏は語る。「自分とは違う民族の人々もいると知っておけば、社会人になってから有利になる」とも説明した。
ウポポイは現在、Webと全国主要コンビニエンスストアで前売り入場券を発売中。販売券種は、「大人(一般)1200円」と「高校生(一般)600円」。購入時に付与されるQRコードをスマートフォンなどで提示すれば、チケット売り場に並ばずに直接ゲートから入場できる。
▼ウポポイ=htpps://ainu-upopoy.jp/school/
JR東日本とJR北海道は、定時運行率が約97・3%と高く、運休も少ないため教育旅行での北海道新幹線の活用を提案した。
今年度から、片道利用時における割引施策を高等学校向けに設定。片道に新幹線を利用すると運賃が5割引になる。設定期間は往復ともに10月1日~11月30日。上限人数は1列車あたり200人で、上回る場合は要相談。
今年度は関東地区の高等学校17校がこの制度で北海道新幹線を利用した。
また、関東地区(東京都・埼玉県・栃木県・群馬県・千葉県・茨城県)の中学生を計画的に運ぶ「連合体輸送」が北海道新幹線でも可能になった。中学校では指定列車運賃の5割引が適用される。上限人数は1列車あたり約350人。
今年度末までには、北海道新幹線区間を走行する全車両が無料公衆無線LAN(Wi-Fi)対応となる。他にも、従来の札幌~室蘭間を結ぶ特急「すずらん」12本に加え、札幌~函館間を結ぶ特急「スーパー北斗」を19本停車させるなど、特急列車の白老駅停車本数を春から大幅に増やす。アイヌ語による車内放送も実施する。
北海道新幹線では、新八雲駅・長万部駅・倶知安駅・新小樽駅を経由する札幌駅までの延伸も計画中。この5駅は2030年度末に開業予定だ。
学校への個別説明会なども随時実施中だ。
▼JR北海道 東京営業部 外販グループ TEL=03・5334・0463、Eメール=tyo-gaihan@jrhokkaido.co.jp
同機構は、教育アドバイザーの派遣や保護者説明会のサポートも実施している。
教育アドバイザー派遣では、北海道博物館の学芸員や北海道歴史文化財団職員、北翔大学教授などの専門家を派遣。北海道の開拓の歴史や風土・文化、環境、北方領土や青函トンネルの概要などに限らず、訪問地での自主研修へのアドバイスにも無料で対応する。
教育旅行の方面変更時や、出発前に実施する保護者説明会にも同機構の職員が学校へ赴き、説明会のサポートを行う。
申込みは随時受け付けており、上限に到達しだい受付終了となる。
▼北海道観光振興機構 TEL=011・231・5881
教育家庭新聞 健康・環境・体験学習号 2020年2月17日号掲載