首都圏の小中高の教職員を対象に「スチール缶リサイクル工場見学会」(主催=スチール缶リサイクル協会、日本製缶協会、公社・日本缶詰びん詰レトルト食品協会)が8月1日に行われた。新浜リサイクルセンターとJFEスチール(株)東日本製鉄所(千葉地区)を訪ね、スチール缶が鉄資源になる工程を視察した。
午前は新浜リサイクルセンター(千葉県)で、千葉市内から運ばれてくる不燃ごみの選別作業を見学した。ごみの中から資源物を見つけ、マテリアルリサイクルをするための施設だ。
ごみ収集車が運んできた不燃ごみは、ビン・缶・ペットボトル・埋め立てごみ(粗大ごみ)に分けられる。鉄の特性を持つスチール缶は磁力選別機で選別される。その残りから手作業でビンを分け、アルミ缶は磁力に反発する性質を活かし選別する。
スプレー缶の処理などは手作業で行う。「選別段階で中身の残っているスプレー缶を見逃すと、破砕機に運ばれた際に爆発し、工場が2日止まる。そのため運ばれた1日1万本以上のスプレー缶は、すべて手作業で穴を開ける」「空き缶の中にたばこの吸い殻が入っていると選別者は重さでわかる」などの説明には、教職員からも感嘆の声があがった。
同センター職員は「小学生には『ごみをリサイクルする』ではなく『社会から借りているスチール缶』と説明している」と話す。他にも、近年誕生した比重の軽いペットボトルをどう仕分けるかが最近の課題であることにも触れた。
午後のJFEスチール(株)東日本製鉄所(千葉地区)では、鉄の製造過程を紹介し、集められたスクラップが再び鉄の原料となる製鋼工場内部の様子を見学した。
高炉(溶鉱炉)では、石炭(コークス)や石灰石などの原料と高温の熱風によって還元反応を起こし、鉄鉱石から不純物を除去して「銑鉄」(炭素含有量2%以上の、純度の低い鉄)を取り出す。銑鉄は転炉に移され、そこで「鋼」(同2%以下の、純度の高い鉄)に精製される。
鉄は、何度でも製品に生まれ変わる。現在、国内でのスチール缶のリサイクル率は90%以上だ。
スチール缶を含む鉄製品のスクラップは、転炉で10%ほど投入されている。酸素を取り入れて不純物を燃焼させることで製鋼するため、転炉では激しい火花が上がる。熱気と迫力が直に伝わってくる製鋼風景に、参加者は圧倒されていた。
転炉投入後およそ20分間で精製された鋼は、連続鋳造設備で「スラブ」というブロック状の半製品に成形される。その後は熱間圧延機を往復させることで、薄く引き伸ばす工程を繰り返し、0・8~25mmの厚みの鋼板が作られる。その後の冷間圧延により、注文のあった製品ごとの使用用途に合わせた厚さにまでさらに引き伸ばされていく。
同製鉄所は関東大震災後に作られたため、震災対策が施されている。東日本大震災でも倒壊した場所はなかったが、設備投資を重視し、40年前から使用していたコークス炉などの設備は、時代に合わせて更新している。
同製鉄所のスタッフは「高炉を止めてしまうと、炉内にある銑鉄が冷えて固まってしまい、鉄を爆破して砕くか高炉を解体するしかなくなる。震災があっても、高炉だけは止めないようにする必要がある」と説明した。
同製鉄所では一部の工場で見学コースを設けており、地域の学校が見学に来ることも多い。鉄の製造だけでなく、周辺市街地への公害対策や環境への配慮も伝えている。
▼国の基幹産業として溶鉱炉を事故などで止めないように、細心の注意を払っていることが印象的だった。(葛飾区立東綾瀬小学校)
▼高純度の鋼がどう作られているかを知ることができた。大切な資源を無駄にせず、長く使うことの重要性を感じた。(東京都立葛飾ろう学校・工業科)
▼製鉄所での設備投資や地震対策も含め、世界に誇る技術だと感じた。「資源は社会からの借りたものなので、リサイクルすることで社会にお返しする」という言葉を子供たちにも伝えたい。(新宿区立富久小学校・主任教諭)
▼設備の説明をしてくれている方の仕事に対する情熱に心を打たれた。(千葉県立我孫子特別支援学校・知的障害担当)
▼この現場の方々が日本の社会・経済を支えているのだと思った。授業などでしっかりと話し、校内のごみ箱の中を生徒と共に分別していきたい。(埼玉県立特別支援学校大宮ろう学園・保健体育科)
▼スチール缶はリサイクルの優等生であると理解できた。ペットボトルのふたの下に貼られる帯シールの分別方法が印象的だった。(入間市立藤沢中学校・音楽科)
▼ペットボトルのキャップを外すべき理由は、1年生のプラスチックの学習で話したいと思った。(清瀬市立清瀬第五中学校・理科)
▼スプレー缶のガス抜きやペットボトルのふたを取る作業を、人の手でやっていると知り驚いた。一人ひとりがルールを守ってごみを出すことの大切さを再認識した。(筑波大学附属聴覚特別支援学校・音楽科)
教育家庭新聞 健康・環境・体験学習号 2019年9月23日号掲載