(公財)日本修学旅行協会は、8月22日に都内で「第15回教育旅行シンポジウム」を開催した。「ICTを活用した教育旅行~新学習指導要領にいう『深い学び』につなげるために~」をテーマに基調講演やパネルディスカッションが行われた。
全国学力・学習状況調査の試験結果では、小数の掛け算の問題(正答率97・7%)が家庭の問題として出題されたとたん、正答率が27・7%まで低下する現状がわかり、学校で学んだ知識が社会に役立てられていないと指摘されている。
これは、学校と社会のつながりが断絶されていることによるものなので、学校と社会をつなぐ学習が早急に求められている。学校へのICT導入や統計教育、教育旅行も、学校の知識を社会とつなげるための活動だ。
ICT技術はすでに広く活用されている。
京都光華高等学校ではAR(拡張現実)技術による町おこしプロジェクトが探究学習として実施された。市販アプリ「マチアルキ」を使用して徳島県の児童らが作成したアプリ「山城妖怪めぐり」では、AI(人工知能)技術が使われている。一方で、AI(人工知能)にできないこともある。それが①知識の「関連づけ」、②感情で表現すること、③デザインすること、④現実世界から学ぶこと、の4つだ。
現実世界から学ぶ状況的な学習こそが、教育旅行である。ICTを活用した教育旅行では、場面・素材ごとに専門家から深いメッセージが聴けるかが重要だ。
パネリストは清水団氏(城北中学校高等学校・ICT委員長)、山﨑良氏(三重県松坂市立三雲中学校・研修主任)、藤田千織氏(東京国立博物館・博物館教育課・教育普及室長)、井上幸治氏(奈良県県土マネジメント部まちづくり推進局・平城宮跡事業推進室・室長補佐)、小野田一樹氏((株)JTB教育事業ソリューションセンター・開発グループ・営業開発プロデューサー)。同協会理事長の竹内秀一氏がコーディネーターを務めた。
清水「ものを創造する、解決しようとする、知ろうとすることは誰にでもある。ICTを使うことで『何かをしたい』という子供の気持ちをサポートし、『自分にもできるのではないか』と思ってもらいたい」
山﨑「ICTを活用して協働学習を行うと、『どう発表するのか』を考えて多様なアプローチができ、子供同士がお互いに表現しあうので、深い学びにつながっている」
藤田「子供に自分事だと思って見学してもらうため、スクールプログラムで『学校版トーハクなび』(見学ガイドアプリ)がインストールされたタブレットを貸し出している」
井上「VRマップ上で施設・歴史情報を得ながら奈良時代の歴史ストーリーを体験できるアプリ『なら平城京歴史ぶらり』を導入している」
小野田「行程を生徒主導でも決められるように、修学旅行サポートサイト『JTB-EDIC』を9月から開始する。教育プラットフォームClassiとも連動する」
教育家庭新聞 健康・環境・体験学習号 2019年9月23日号掲載