スチール缶などのリサイクル現場を教職員に体験してもらう「スチール缶リサイクル工場見学会」(主催=スチール缶リサイクル協会、日本製缶協会、公社・日本缶詰びん詰レトルト食品協会)で、8月2日、首都圏の小中高の教職員らが新浜リサイクルセンターとJFEスチール(株)の東日本製鉄所(千葉地区)を訪問。スチール缶が鉄資源に生まれ変わるまでの過程を視察した。
まず一行は千葉市の新浜リサイクルセンターを視察。市内から運ばれてくる不燃ごみの選別を見学した。
トラックからごみピットに投入された不燃ごみは、ビン、缶、ペットボトル、埋立てごみ(粗大ごみ)に分けられる。缶はさらに、磁力選別機によってスチールとアルミに選別される。磁石に引き寄せられる鉄の特性を利用して、磁力を持つロールを回転させ、スチール缶を効率よく集めていくという仕組みだ。同施設の磁力選別機は1次~3次まで3段階あり、徐々に磁力を高めて選別していく。
しかし、選別は機械による作業だけではない。缶の中に他のごみが入っている場合などは、全て人の手によって取り除いているという。教員からは驚きの声とともに「分別の意識は大切だ」という声が聞かれた。同センター職員は「捨ててしまえば、使える資源もごみになってしまう。捨てる前に何が本当のごみか考えて欲しい」と話す。選別後、スチール缶はプレスしてブロック状にされ、スクラップとして再生業者に引き取られていく。
製鉄メーカーであるJFEスチール㈱東日本製鉄所(千葉地区)では、鉄の製造過程を見学。スクラップされたスチール缶が再び鉄の原料となる製鋼工場の現場に入った。
溶鉱炉では鉄鉱石を、石炭(コークス)、石灰石などの原料で還元し、銑鉄(炭素含有量2%以上)を取り出す。銑鉄は転炉に移され、酸素を取り入れて鋼(同2%以下)に精製されるが、スクラップはこの際に投入される。転炉へ流し込まれた銑鉄は激しく火花を上げ、熱気と迫力のある光景を前に参加者からは「子供たちに見せたい」という声も上がった。
銑鉄は転炉に投入後、約20分で鋼に変わる。鋼は連続鋳造設備で連続的に固め、「スラブ」というブロック状の半製品に成形。そして、熱間圧延機を往復させ、薄く引き伸ばす工程を繰り返していく。
最終的に製品としての使用用途に合わせた厚さまで引き伸ばす。飲料用スチール缶には、約0・03ミリ~1・08ミリの厚さに成形された製品が使用されているという。
同製鉄所では一部の工場に見学コースを設けており、地域の学校が見学に来ることも多い。鉄の製造だけでなく、周囲の市街地への粉塵などの配慮や環境面の対策も伝えている。
▼リサイクルと製鉄工場をセットで見学できたのが良かった。(世田谷区立京西小・主任教諭)
▼写真や動画とは違う体験ができた。生徒たちにも体験させて、日本の産業について理解を深めて欲しいと強く思った。(世田谷区立用賀中・副校長)
▼製鉄所では炉の大きさや迫力を実感できた。化学の授業で製鉄の学習時に話す材料にする。(聖心女子学院中高・教諭)
▼リサイクルの必要性について具体的に授業で取り上げ、生徒たちの環境問題への意識を高めていきたい。(頌栄女子学院中高・教諭)
▼機械の座学授業で、写真を提示して実体験を伝えたい。リサイクルについても総合的な学習で扱いたい。(都立立川ろう学校・高等部主任)
▼手作業での分別作業があることに驚いた。障害者の職場として考えられると思う。(都立葛飾ろう学校・実習助手)
▼特別支援学校における作業学習の際に、職業や仕事の分業のモデルとして、リサイクル工場や製鉄所の様子はとても参考になる。(都立城南特別支援学校)
▼実際に熱を感じて体験できたことはとても貴重な経験となった。見学したことは地域の行事でも伝えていきたい。(川島ひばりが丘特別支援学校・教諭)
▼スチール缶を鉄として意識し、リサイクルの大切さを知った。ボランティア部で生徒に指導したい。(埼玉県立秩父農工科学高・養護教諭)
教育家庭新聞 健康・環境・体験学習号 2018年9月17日号掲載