昨年3月に小中、今年3月に高校に向けて公示された新学習指導要領では、学校現場においてこれまで以上に体験活動を重視することが求められている。子供たちの学びに教育旅行が果たす役割と計画の立て方について、文部科学省初等中等教育局児童生徒課・学校体験活動推進専門官の北﨑哲章氏に話を聞いた。
―生産年齢人口の減少やグローバル化など、現代社会は目まぐるしく変化しており、子供たちはこれらに対応していかなければなりません。学校現場においても、その変化に積極的に向きあうことが大切です。友人や異年齢間の交流などを通じて課題を解決する力を養い、様々な情報を見極める力を身に付けていくことが、新たな学びの価値につながっていく、と考えられています。
子供たちにこれらの力を身に付けさせるために、新学習指導要領では、「社会に開かれた教育課程」を重視していく方針が示されています。現行の学習指導要領において重視されている、「知識および技能の習得と思考力・判断力・表現力等の育成のバランス」を重視することは維持しつつ、さらに「知識の理解の質を更に高め確かな学力を育成」することで、学びに向かう力や人間性の涵養を育むことにつながります。また、豊かな体験活動を通して、他を思いやる優しさ、社会性などを育てることで、いじめの未然防止や不登校児童生徒の積極的態度の醸成、自己肯定感の向上等も期待されます。
―教育旅行は特別活動の「学校行事」に位置づけられており、特色ある学校づくりを進める上で、中心的な役割を担います。例えば自然の中での豊かな体験、芸術文化に触れて感性を高める体験などにおいて、教科に関連する学習や探求的な活動を効果的に展開することが考えられます。その場合には、授業時数に含めて扱うなど、柔軟な年間指導計画の作成の工夫が大切です。
―教育旅行の内容等については、各学校が地域や学校の実情等を踏まえ、決定するものですが、原則としてすべての児童生徒が参加できることや実施に必要な経費をなるべく低廉にすること、その環境でしかできない教育活動を豊富に取り入れるように工夫すること等に留意して計画することが大切です。
―学校は、受け入れ側と旅行会社に新学習指導要領の内容等を理解してもらい、教育旅行における学習のねらいをしっかり伝えていかなければなりません。3者の密な連携が重要であり、どちらかに頼り切るのではなく、具体的な情報交換を重ねることが大切です。学校の学習のねらいをしっかり把握することにより、受け入れ側がプログラムに工夫を凝らすことにもつながります。
教育家庭新聞 健康・環境・体験学習号 2018年9月17日号掲載