(公財)全国修学旅行研究協会(以下、全修協)は、「感性をはぐくむ修学旅行」を主題に、7月30日に「第32回全国修学旅行研究大会」を開催した。本年度の研究主題は「学びの集大成を図る修学旅行‐被災地復興への継続的支援‐」。被災地への支援は、全修協の事業目標に掲げ4年目となる。
開会に先立ち全修協の岩瀨正司理事長は「戦後70年の節目を迎え、修学旅行を平和な社会の象徴にしたい。いつまでもこの行事を大切にしたいと強く願う」とあいさつ。
さらに、全修協の石原輝紀調査研究部長より修学旅行の現状と傾向が報告された。近年の傾向として「班別学習」「体験学習(農山漁村体験含む)」「キャリア教育」「環境学習」「平和学習」「防災学習」が重視され、その中でも特に、人との交流がメインとなっているという。
後半は、実践発表と講演が行われた。東日本大震災の悲惨な経験・記憶をポジティブに捉え「ひとつ上の自分」に成長させる機会特別活動を取り入れた事例として「災間を生きる~心のケアと特別活動(防災交流、修学旅行)」を、宮城県石巻西高等学校の服部高浩主幹教諭と佐藤淳志教諭が発表した。
同校は被災から2か月近くも避難所として運営され、新年度から1か月遅れて学校再開。生徒・教職員の物心に大きなダメージを受け、その年11月に生徒に実施したアンケート調査では、「喪失感、無力感が充満していた」結果だったという。
生徒に変化が見られたのは平成25年度。7月の文化祭で全校生徒の笑顔を集めたモザイクアートを作成して教職員を元気づけ、12月には部活対抗駅伝大会を自主的に開催するまでになった。並行して、長野県の小中学生、兵庫県の高校との防災交流を経験し、生徒に「自己有用感」が育ってきたと言う。
そして昨年度の修学旅行は目的を「郷土復興の担い手として出来ることを模索する」に定め、神戸「人と防災未来センター」を組み入れた。一方で生徒の心情を考慮して、同センターを外したコースも含め3コースからの自由選択で実施。センター以外の参加が最も多いだろうと教員は予測していたが、6割以上がセンター見学コースに参加。「自分の経験を伝えられる人になりたい」、「自分たちの町も神戸のように復興させたい」などの感想が寄せられた。
続く特別講演は、法相宗大本山薬師寺執事・大谷徹奘師の「古都 奈良で学ぶ 人の心」。薬師寺をはじめ法隆寺や東大寺などは、墓地を持たず葬式にも関与しない、つまり「今、生きている人間を相手にする」学問修養の寺であるとして、「心はどこにあるのか」から講話を始めた。
オリジナルのシートを使って記入しながら、心の働きと「人生を惑わす心 黒き魔の攻撃軍」(=煩悩)の関係、それらを「降伏させる方法」(=静思)など、自身の失敗談や経験を交えユーモアいっぱいに伝えた。
【2015年9月21日号】