アサヒビール(株)は、環境教育をテーマにしたアクティブ・ラーニングプログラム「若武者育成塾」を2006年から実施し、昨年度で10回目を終えた。高校生が地域の環境問題について自ら学び、自分たちで何ができるのか考え実行していくこの活動は、これまで70チーム242名が参加してきた。4月15日には、環境教育の実践者となる高校教諭や環境教育関係者に、大阪で「若武者育成塾」のエッセンスを取り入れたセミナーを開催した。
セミナー前半は、養殖漁業家で特定非営利活動法人「森は海の恋人」の理事長である畠山重篤氏が地域に密着した環境教育の取組について講演。畠山氏は宮城・気仙沼の海で牡蠣の養殖をする中で、美しい海を保つためには川から流れてくる水が重要であると気づき、その上流にある山を健全にすることが重要と考え、植樹等の活動を長年続けている。
川の上流にある岩手県の小学生を招き、海で牡蠣の養殖を見せる活動をしたこともあり、「汽水域(淡水と海水が混在した河口付近)は人間の様々なものが集まってくる場所。海の背景にある流域の人たちに協力してもらうことが大切で、それには”教育”が最も重要だ」と話す。
畠山氏の活動である「森は海の恋人」は、小学校5年生の社会科の教科書に掲載。「The Sea is longing for the forest」と英訳され、高1の英語の教科書にも掲載されている。
「私は植樹活動をしているが、環境教育では子供たちの心に木を植えることが必要で、それには”言葉”が重要だ。環境教育は文系・理系どちらの要素も持ち合わせており、それを子供たちにアピールしてほしい」と話すと、教員らは大きくうなずいた。
後半は、グループワーク「環境アイデアソン」の時間。「アイデアソン」とは「マラソン」に掛けた言葉で、時間を決めて「アイデア」をグループで話し合う、近年活用されている手法だ。
参加教員らは高校生になった気持ちで、これに挑戦。ゴミ問題、水質汚染、食品廃棄、生物多様性の本質などの「地域課題」に対し「アプローチ」のキーワードを混ぜ込み、「アイデア」を練る。アプローチには、若者が関心・関係のある「SNS」や「体育祭」などのキーワードを入れる。ルールは「人の意見は否定しない」こと、そして「楽しむ」こと。
ある班は「地球温暖化」を地域課題とし、「BBQ」をアプローチに、太陽光でBBQをしたり、夜は自分たちが昼に発電した電気の灯りを使って体育館で宿泊する、というイベントの開催を提案した。
参加した大阪府内の私立高校教諭は「畠山さんのお話を聞いて、森・海・川が一体となっていることをもっと伝えていくことが重要だと感じた。グループワークはとにかくおもしろい。アクティブ・ラーニングの取り入れ方を模索していたので、この方法であれば生徒たちにも伝えやすい」と、早速校内で話し合いたいとする。
■第11期は6月2日まで
今年度の若武者育成塾の募集は、4月25日から開始。「あなたの地元地域が抱える環境課題について」をテーマに論文または動画で応募。詳細=www.asahibeer.co.jp/csr/wij