埼玉県所沢市は、安心・安全でおいしい学校給食を安定的に提供するため、新たな学校給食センター「トコろんキッチン」の整備を進めている。名前は公募により市のマスコットキャラクターから命名した。PFI方式を採用し民間事業者のノウハウを活用。環境に配慮した省エネ対策や衛生管理、食育活動に取り組む予定だ。2024年4月の運営開始を目指す。
所沢市では現在2か所の学校給食センターを運営。公立小中学校47校のうち約6割の29校へ、1日あたり約1万5600食を提供しているが、1980年竣工の第1学校給食センター、1975年竣工の第3学校給食センターとも運用後40年以上が経過。施設の老朽化が進み、維持管理が難しくなってきており、新しい学校給食センターの整備をスタートさせた。
同施設は「所沢市公共施設等総合管理計画」と「所沢市PFI導入ガイドライン」に基づき、民間事業者の資金、経営能力及び技術的能力を活用する。
PFI方式は、設計・整備・維持管理・運営を民間事業者が一貫して実施し、事業者独自の創意工夫やノウハウが発揮され、効率的で効果的な運営環境が創出できる。また民間資金を活用し、事業期間終了時までに事業費を分割して支出することが可能になり、財政負担の平準化が図られる。市と事業者でリスク分担を明確にすることで、事業全体のリスクの低減が図られ、実際のリスクが発生した際にも、迅速に対応できる。
事業者の選定には、2020年11月から21年8月まで「所沢市民間資金等活用事業選定委員会(学校給食センター再整備事業)」を4回開催。外部の識者に委員として参加してもらい、専門的・客観的な見地から意見を求めた。
同委員会では、実施方針や要求水準書、落札者選定基準の作成と選定を行った。選定基準は、入札価格に加え施設や設備の性能・維持管理・運営における業務遂行能力、事業計画の妥当性を総合的に評価し、総合評価一般競争入札方式で審査した。9月に落札者を決定し、代表企業に㈱東洋食品、構成員として㈱楠山設計、西武建設㈱、平岩建設㈱、タニコー㈱、伊藤忠アーバンコミュニティ㈱、加藤商事㈱、NECキャピタルソリューション㈱を選定した。落札価格は約99億円。敷地面積7039・59㎡で、調理能力は1日当たり最大9000食。建設期間は2021年12月から24年1月まで。運営期間は15年間となる。
環境に配慮した省エネ対策を講じている。屋上には約1300㎡の太陽光パネルを設置し、稼働に必要な電力の約10%を創出できる。また非常照明も含め、すべてLED型照明器具を採用、消費電力を極力抑える。
アレルギー対応食にも力を入れる。センター内にアレルギー対応食専用の調理室を配置する。使用食材も専用の食品庫・調味料庫に保管し、交差汚染などを防止。提供する際にも専用の容器を使用する。
学校給食衛生管理基準/HACCPに基づいた作業区域確保と、衛生管理を徹底し、調理の工程管理を行う。給食エリアは、作業動線の交差による相互汚染を防止するため、汚染作業区域と非汚染作業区域とを明確に区分し、壁で完全に分離する構造とするなど、衛生基準等を遵守したゾーニングとする。各ゾーンは給食調理の流れと食品が一方向になるように配置。検収、下処理、調理、配送などの各ゾーンに分けた平面設計とし、さらに各ゾーンが可視できるよう工夫している。
22年4月に、児童生徒や市民に親しまれるよう、新しい学校給食センターの「愛称」を市内の小中学生より募集。約700の応募があり、所沢のマスコットである「トコろん」が料理を作っている様子をイメージした「トコろんキッチン」に決定した。
さらに新センターでは、調理の様子が見学できるモニターや通路を設置し、子供たちや市民向けにDVDを作成したり、食に対する関心や食育への意識を高めもらうよう取組を進める。
教育家庭新聞 健康・環境・体験学習号 2023年4月17日号掲載