文部科学省は8月2日、総合教育政策局地域学習推進課長と初等中等教育局学校デジタル化プロジェクトチームリーダーの連名で、「1人1台端末環境下における学校図書館の積極的な活用及び公立図書館の電子書籍貸出サービスとの連携について」の事務連絡を、各都道府県・指定都市図書館・学校図書館担当課長、各都道府県・指定都市教育委員会指導事務担当課長、各都道府県私立学校主管部課長などに向けて行った。
環境整備の推進と積極的な利活用を求める
文書では、児童生徒の1人1台端末等のICT環境を活用した新しい学びが全国各地で開始される中、主体的・対話的で深い学びの視点から児童生徒の資質・能力を育成するためには、「教科書、資料集等の教材、書籍、新聞、雑誌、インターネットなどを効果的に組み合わせて活用することが重要」としている。
そこでこのような学習活動の充実のために、「学習センター」「情報センター」としての機能を有する「学校図書館の利活用は大変有効」だとし、図書の充実を含め、学校図書館の環境整備を計画的に行い、学習活動における学校図書館の積極的な活用を図るように求めている。
一部の自治体においては、児童生徒に対し、電子書籍貸出サービスのIDを一括で発行している事例がある。
こうした取組は各学校の学習活動のほか、長期休業期間中の児童生徒や、感染症や災害の発生等の非常時に、「やむを得ず登校できない児童生徒の自宅等での学習においても効果的であると考え」、学校設置者と図書館担当部局が連携し、こうした取組の実施を積極的に検討するように求めている。
公立図書館のサービス学校と連携事例を紹介
児童生徒に公立図書館の電子書籍貸出サービスのIDを発行している、実際の事例についても文書では紹介している。
■大阪府東大阪市では、市立図書館と連携し、GIGAスクール構想による1人1台タブレットを用いて利用できるよう、2021年6月24日から「ひがしおおさか電子図書館」の専用IDを市内小中学校・高等学校の児童生徒に付与した。市立図書館の「ひがしおおさか電子図書館」は、日本最大級の蔵書を備え、2022年3月末時点で約4万7000点(うち、児童書数約7700点)。
児童生徒に市から配布されているiPadのトップ画面にアイコンを配置し、直接「ひがしおおさか電子図書館」にアクセスできる。朝の読書活動などで、紙の本に併せて電子図書館の本も自ら選んで読んでいる。2022年度からは同時に利用する人数に制限のない「読み放題」の本も提供され、活動の幅が広がったという。
また、学校司書連絡会では、市立図書館の館長より学校司書に「ひがしおおさか電子図書館」の利用方法について説明している。
児童からは「紙の本は探すのに時間がかかるけど、電子図書館は探すのが簡単。本を耳で聞けるのは印象に残った。もっと本が読みたくなった」等の感想もあった。東大阪市HPでは、朝の読書や調べ学習等の様子も紹介されている。
■北海道帯広市の帯広市図書館が2021年4月から運用を開始した「帯広市電子図書館」は、市内の全小中学生にGIGAアカウントの配布に併せて、電子図書を借りるためのIDを付与して活用を進めた。2021年度の電子図書の貸し出し総約19万冊のうち、小中学生による利用が約15万2000冊と、全体の8割を占めた。児童生徒は紙媒体の本と併せて電子図書を利用している。
市内小中学校の教員や保護者を対象に「帯広市電子図書館使いこなし教室」も開催。クラス全員で同じ書籍を読む方法や、授業展開のアイデアを司書が説明するなど、より有効に電子図書館を活用できるように取り組んでいる。
電子書籍の活用による中高生の読書推進事例も
また文部科学省「2020年度電子図書館及び電子書籍を活用した子供読書活動推進に関する実態調査」調査報告書概要では、全国の自治体における電子書籍の導入・活用状況の調査結果と合わせ、「公立学校の電子書籍を活用した取組事例」「私立学校の電子書籍を活用した取組」「公立図書館の電子書籍を活用した取組」を紹介している。
その中の1つ「青少年のための電子書籍サービス『With Books ひろしま』」の“コロナ禍における青少年の心のケアと学びの支援の取組”の事例では、広島県立図書館が中学校・高等学校・特別支援学校等を訪問して電子書籍を実際に体験する取組を行っている。普段あまり本に馴染みのない生徒たちがタブレットで電子書籍を読む様子が見られたという。
他にも電子書籍を活用して中高生の読書推進に取り組む自治体公立図書館の事例なども掲載している。
文科省関連Webサイト
https://www.mext.go.jp/content/20220803-mxt_jogai01-000003278_1.pdf
https://www.mext.go.jp/content/20210610-mxt_chisui02-000008064_0202.pdf
教育家庭新聞 健康・環境・体験学習号 2022年8月15日号掲載