絵本『100歳ランナーの物語 夢をあきらめなかったファウジャ』(西村書店刊)の作者、シムラン・ジート・シング氏がアメリカ・ニューヨーク市から来日し、3月18日、東京・千代田区神田神保町のブックハウスカフェでサイン会を行った。
日本での出版にあたり、シムラン氏は「何事も諦めずにチャレンジする、というファウジャさんの信念を世界中の子供たちに伝えたい。今回日本で出版されたことで、日本の子供たちにも伝えることができて嬉しい」と語る。
本書はインドのパンジャブ地方出身のマラソンランナー、ファウジャ・シン氏の半生を描いた作品。
ファウジャ氏は幼いころ体が弱く、歩くことすら叶わなかったが、練習を重ね、5歳で歩けるようになる。81歳の時には生まれ育った村から、子供たちの住むイギリスへ移住。言葉も通じない中でマラソンに取り組み始め、89歳でロンドン・マラソンを完走。さらに100歳でカナダのトロント・ウォーターフロント・マラソンを完走し、世界で最年長のフルマラソン完走者となった。
周りの人たちに“そんなの無理”と言われながらも諦めずに挑戦しつづける姿を、明るく軽快に描いている。
巻頭の「はじめに」には、ファウジャ氏自身からのメッセージも紹介されている。
『100歳ランナーの物語 夢をあきらめなかったファウジャ』
シムラン・ジート・シング/文
バルジンダー・カウル/絵
金 哲彦(プロ・ランニングコーチ)/監修
おおつか のりこ/訳
1760円(税込)
描かれているファウジャ氏が頭にターバンを巻いているのは、シク教の教えに従っているため。
本書では“諦めない強い気持ち”を持ち続けるファウジャ氏のバックボーンでもあるシク教についても触れている。
作者であるシムラン氏、イラストレーターのバルジンダー・カウル氏、またファウジャ氏のマラソンコーチであるハーマンダー・シン氏も同じシク教徒だ。シムラン氏は「シク教は、勤勉に働く、お年寄りを敬う気持ちが強いといった文化があります」と話す。
執筆にあたり、シムラン氏がファウジャ氏にインタビューを行った際には、ファウジャ氏のパンジャブ語を、マラソンコーチでファウジャ氏の親友でもあるハーマンダー氏が通訳を務めたという。
絵を担当したロンドン在住のバルジンダー氏は、2日間じっくりとファウジャ氏を取材。ファウジャ氏が楽しそうに走ったり、歯を見せて元気に笑う姿を描いた。
また「当時食べていたものの名前を文章に入れて欲しい」といったファウジャ氏の意見を取り入れ、「豆のカレー」「ロティ(パンの一種)」なども描かれたほか、バルジンダー氏のアイデアで、シク教のお寺が映されたバンジャブTVの画面も使われている。全員のアイデアが詰まった1冊が出来上がり、絵の細部まで読み解くのも楽しい。
ファウジャ氏は、今年(2024年)4月に113歳の誕生日を迎えた。
(シムラン氏)「人は、年齢、生涯、職業、住んでいる場所も関係なく、誰もがヒーローになれる!と、日本の子供たちに伝えたいです」。
出版社サイト 西村書店