地形図のある学校図書館の創設実行委員会（地図協会および日本地図センターによる共同運営）は、(公財)図書館振興財団助成事業｢地形図のある学校図書館の創設プロジェクト｣として全国80校以上のモデル校に地形図などのセットを無料で提供。モデル校の中から4校が活用事例を報告する｢地形図等利活用シンポジウム｣が3月2日、都内で開催された。
多くの学校で地形図を活用したフィールドワークが行われた。三鷹中等教育学校では校外学習で訪れる場所について学び、地形図から読み取る力を育成した
地理総合の授業で地域の課題を松戸市に政策提言するために地形図を活用し、学校周辺のフィールドワークを実施した。
新旧それぞれの地形図を用いて、地域の変貌について理解を深め、さらに歴史史料や新旧地形図から学校周辺の昔の環境を復元し、学校周辺地域や自治体が抱える課題を解決する方法を考えた。
生徒からは｢同じ地域の地図と重ねることで、その地域の特徴をより詳しく知ることができた｣などの感想が聞かれた。
2年生｢白馬校外学習｣の事前学習で地形図のコピーを生徒に配布。宿泊する地域がどのような地域か知るため、縮尺や地図記号を確認したほか、尾根線や谷線の読み取り方などを学んだ。これにより地形図から地域の大まかな特徴を把握する力が身についた。
学校周辺のフィールドワークでは事前学習として、地形図や旧版地形図、時代ごとの空中写真の読み取りを実施。いつの時代に、どの道ができたかなどを読み取ることで地域の変容を考察。フィールドワークで実際の景観を観察したことで地域の歴史や特徴に関心を持たせることにつなげた。
2年生｢自然災害に対する備え｣で地形図などを活用。授業ではハザードマップを用いて、中学校周辺の自然災害被害の可能性を考察した。生徒はハザードマップを見て、中学校が家屋倒壊等氾濫想定区域に含まれていることから、学校が避難所に指定されていない理由を理解した。
また現在と明治時代の地形図を比較し、学校周辺の地形の特徴や変遷を読み取った。2つの地形図を比較することで川の流れが変わっていることに気づいたという。
高校3年・地理演習｢河川流域と海岸に見られる小地形｣の単元で地形図を活用。フィールドワークの計画を立てる際、平坦なイメージの学校周辺でも地形の起伏があることを実感させた。
フィールドワークの事前学習では傾斜角などを測定できるハンドレベルを練習で使用したほか、地形図と空中写真を用いて距離計測や標高の確認など読図作業を行った。
紙の地形図を使うことで調査対象外の部分にまで目が届き、無駄のように見える部分から思わぬ発見があったという。
シンポジウムでは事例を発表した教員らをパネリストに総合討論も行われた
教育家庭新聞 健康・環境・体験学習号 2025年3月17日号掲載
