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図書館

事例紹介:茨城県立水戸工業高等学校~「探究的な学習」で必須スキルを身につける~全学科で活用する共通テキストを作成

2024年11月19日

茨城県立水戸工業高等学校(久松政信校長)の探究的な学習は、1年生「総合的な探究の時間『進路探究』」、国語をはじめ各教科における探究学習、さらに3年生「課題研究」がある。2023年度からは全学科・教科で横断融合的に使用できるオリジナルのテキストとなる『水工Skills(すいこうスキルズ)』を作成し取り組んでいる。学校図書館を学びの場とし、探究学習に情報活用スキルを組み込んだこと、キャリア教育としたこと、全学科で実践していることに注目した。

1年建築科の総探「進路探究」の授業。集中して取り組む

6学科ある工業高校で共通テキストを作成して情報活用能力を育む

水戸工業高等学校は、工業化学科・機械科・電気科・情報技術科・土木科・建築科の6つの学科がある、1909年創立の伝統校だ。6学科ごとに学ぶ内容が異なり、教職員の人数は100人ほどにのぼる中で、全学科共通で使用しているテキストが『水工Skills』。情報活用の力を身につけながら、自らの課題設定からプレゼンテーションまでを学ぶ内容だ。

『水工Skills』は1年生の「総合的な探究の時間『進路探究』」の単元のテキストになっているほか、国語科をはじめ各教科における探究学習でも使用し、3年生の「課題研究」につなげる。「進路探究」で取り組むキャリア教育は、全学科共通のテーマでもある。

「探究の型」で考える

10月下旬、学校図書館で行われている建築科1年生「総合的な探究の時間『進路探究』」(=以下、総探)の授業を訪れた。10月からの後期16時間単元の6時間目。生徒は1人1台端末を使い、これまでの学習をスライドにまとめる作業に集中して取り組んでいた。

男子生徒のひとりは「(総探の)授業が楽しい。まだ将来の夢が1つに絞れていないし、自分の知らない資格や仕事があることを調べて考えられるから」と話してくれた。他の生徒たちも「建築士」「宮大工」「獣医」「自衛隊」など興味のある職業について、それぞれスライドを作成していた。

『水工Skills』では「探究の型」という考えのもと、課題の設定から、情報収集・整理・分析、まとめ・発表までを一つの「型」として学習を進め、探究に必要な基礎的な力を身につける。

「探究シート」に記入した内容をもとにスライドを作成する

生徒たちは『水工Skills』に収められた「探究シート」に記入しながら学習を進める。授業の1・2時間目は「課題設定」。探究シートの記入欄に「探究課題・タイトル」「動機」「目的」「仮説」を記入していく過程で、本や雑誌を見たり、社会の課題に気付くため新聞を読んだり、思考ツールの活用の演習を行う。3・4時間目には、信頼できる情報の見分け方、図書館での探し方、インターネットの検索、著作権、参考文献の書き方などを学ぶ。

そして5・6時間目では集めた情報を「整理・分析」し「探究シート」を記入、これらを元にスライドを構成する。

授業には建築科や理科の教員、学校司書ら6名が関わり、必要に応じて司書教諭も加わる。建築科・副担任の鈴木勝教諭は「『水工Skills』は、各時間に何をするのかが明確で、教員にも生徒にも分かりやすい。これに沿って学習を進め、必要なスキルを身につけることで、3年生の『課題研究』でより深い取り組みができる」と話す。

百科事典も活用

百科事典で「建築士」といった言葉の「定義」を調べる

 

『水工Skills』では「もくじ」を工夫することで全学科・全教科で使いやすくした。1時間目~16時間目までの学習内容を設定し、「総探担当」「国語」「その他の教科」のどこが主で学習するのかも一目でわかる。

なお10~16時間目のプレゼンテーションは、服装や髪型などの発表スタイル、聞き手の態度も『水工Skills』に収められている。探究学習全体を通して、生徒たちは卒業後の就職や進学に際しての‘必須スキル’を身につけていく。

 

多様な資料で学ぶ学校図書館

学校図書館では総探をはじめ、国語科や各教科の授業が行われている。

水戸市立博物館から貸出をうけ第二次世界大戦に関連した資料を展示

国語科で司書教諭の佐久間郷子教諭は、学校図書館が学びの礎になるよう、歴代の学校司書らと共に取り組んできた。

図書資料や新聞、データベース等を充実させるのはもちろん、多様な資料に生徒が触れられるようにしている。

取材時には第二次世界大戦に関する学習と修学旅行の事前学習のため、水戸市立博物館から貸出を受け、戦災・戦争関係資料を館内に展示していた。

 

各教科の教員から調べ学習や著作権学習などの相談が寄せられる学校図書館。そうした中で誕生したのが『水工Skills』だ。

2022年に勝山万里子氏(現・茨城キリスト教大学兼任講師)が学校司書として同校に赴任。勝山氏が前任校(県立水戸第二高等学校)で実践していた「STARTプログラム」から、水戸工業高等学校に必要な要素を抽出し、各教員らの要望をすくい上げ、「課題研究」の授業改善にも活かされるものとなった。

図書館の入り口

学校図書館の入り口。建築科3年生が「課題研究」として斗組(ますぐみ)の技術を使って制作した

 

佐久間教諭は国語科の授業の中で例年「理想の修学旅行をプレゼンする」をテーマに探究学習を行っている。

今年度は『水工Skills』を使った総探に1年生が取り組んでいるため前年度よりも生徒たちの情報収集がスムーズだという。

 

 

 

情報技術科で「総探」を進化させる

左から、勝山氏、保健体育科の関根悟教諭、佐久間教諭、山本教諭

1年生の「総探『進路探究』」は、来年度からは年間32時間の単元となる。そこで情報技術科のみ、先行で今年度4月から1年間32時間の「総探」単元を実施している。

情報技術科の山本茂男教諭は『水工Skills』と合わせて活用する年間指導計画表を作成。さらに「探究シート」は情報技術科用にアレンジし、新たに「ITで社会課題を解決しよう」を作成した。生徒たちは意欲的に取り組んでいる。

山本教諭は「工業は”社会の課題を自分たちの技術で解決する”ことであり、”ものづくり”について学ぶのが工業高校の本質。当たり前にやってきたことが実は探究そのものだった」と実感。総探でさらに生徒の学びを深めようとしている。

 

教育家庭新聞 健康・環境・体験学習号 2024年11月18日号掲載

Web特集 目指すはメーカースペース!

 

探究学習を支えている同校の学校図書館。佐久間教諭は「さらにはメーカースペースとなることを目指している」と語る。その成果は、今年1月、「IBARAKIドリームパス事業」での銀賞受賞、という形で現れている。

IBARAKIドリームパス事業は、茨城県教育庁総務企画部生涯学習課が、高校生を対象に2020年度から実施している事業。地域課題の解決や夢の実現に向けた企画立案・実活動をとおして、高い創造意欲と、リスクに対して積極的に挑戦できる力(起業家精神)を育成することを目的としている。最終選考の通過者には10万円を上限とした活動資金も提供する。

 

剪定された梅の木を活かす

同校では図書委員を中心に結成した「水工みんなの図書館」として応募した。

きっかけは図書委員会のワークショップで「梅染め」を行ったこと。日本三大庭園の一つ、偕楽園で剪定された梅の木をチップにし、煮出して染色液を作り、布などを染める。2022年、水戸ユネスコ協会の指導・協力のもと、工業化学科の実験室で梅染を行った。その後、工業化学科3年生の研究課題では梅染に取り組まれている。

 

機械科が組紐台を手作り

通常は破棄される、剪定された梅の木の活用の道を開きたい――2023年度、再び水戸ユネスコ協会の協力のもと、梅染で染まった糸を組むために、図書委員会の生徒を中心に「組紐」の技術を学んだ。組紐を組むための高価な組紐台は、同校の機械科が、破棄された机の天板などを使用して製作した。

梅染の美しい糸を使った組紐による製品の試作品ができると、水戸市環境フェアなどに出展し、外部からの意見を聞き、ボールペン、ストラップなどに製品化することが決定。ジャズバンド部の定期演奏会で販売すると、製品は完売し好評に。確かな手応えとなった。

2024年1月24日、第5回プレゼンテーション大会「IBARAKIドリーム★パス」AWARDが県庁舎で開催された。同校はここで銀賞を受賞。継続活動費として15万円が授与され、同校では2024年度以降も継続して活動している。

 

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