全国SLAでは、従来の2019年版「体系表」の改定をすすめており、今春2024年「情報資源を活用する学びの指導体系表」改定案を発表、パブリック・コメントを実施した。寄せられた意見を反映したものを、さらに「8月5日改定案」として今大会で発表した。改定案は新時代を生きる子供たちにおいて、育成を目指す資質・能力と本気で取り組む探究的な学習の実現に向けて支援するものとしている。(なお、学びの指導体系表の「確定版」は今年10月の全国SLA機関誌『学校図書館』で掲載予定)。
分科会「新時代の学びのポイント~『情報資源を活用する学びの指導体系表』を生かして子どもたちが本気になる学びをつくる~」では、全国SLAの専門部会(体系表部会)桐畑美登利氏が、改訂の趣旨や構成、ポイントを解説。
さらに、この改定案を活用した授業実践が2校から報告された。
神奈川県横浜市立下野谷小学校司書教諭の千葉尊子氏(全国SLA参事)は、教科横断的な視点をもったカリキュラム・マネジネントを、組織的・計画的に行っている。
小学校3年生総合的な学習の時間「矢向の昔と今 つながり深ぼりたい~クスノキ おまじない~」は地域の伝統文化と継承や発展に尽力する人々の想いや願いを課題として、探究学習を行った。何度も材(=「矢向の昔と今~」)に関わり、探究学習を繰り返すことで、総合的な学習の資質・能力と(体系表に示されていた資質・能力)と、カリキュラムマネジメントに基づいた他教科(国語・社会・理科)の資質・能力ついても子供たちも探究的な学習を通して身につけ、教科における学力をつけることにポイントを置いた。
発表では、学習の場面ごとに、カリキュラムマネジメントに該当する各教科のテーマと、該当する資質・能力を示しながら解説した(=写真)。
「子供たちの学ぶワクワク感を途切れさせず、各教科で学んだことが自分の設定した課題解決に活きていると実感できるよう、カリキュラムマネジメントを考えた。またICT機器の良さを子供たちの実態に即して活用していくように心がけた」(千葉司書教諭)。
横浜市立平沼小学校の尾方優祐主幹教諭は「資質・能力の育成とメタ認知の関係を考えたカリキュラム・マネジメント」と題し、小学校5年生理科の「振り子の運動」の全9時間の実践を紹介した。
学習の基盤となる資質・能力と関連が強い「情報資源の活用」をする力を、問題解決的な学習を通してどのように育成し、子供たちが自在に活用することができるのか。理科の資質・能力と、メタ認知という非認知能力、主体的に学習に取り組む際の評価を大事にした、探究する学びを提案した。
授業では、振り子のテンポ(一往復の時間)と、曲のテンポを合わせられるよう、試行錯誤する。
振り子の「長さ」「おもりの重さ」「振れ幅」と周期の関係について、仮説を立て、解決方法を考え、結果の見通しを立てることは、「情報の収集」「情報の整理・分析」といった「課題解決における思考力・表現力・判断力」のさまざまな要素を育むことにつながっている。
一人ひとりが振り子の実験を行い、ペアでお互いのデータを検証し、さらにクラス全体でデータを共有して話合う。同じ実験をしているはずなのに、異なる結果が出たのはなぜなのか。児童は実験の条件を見直し、振り子のおもりのつけ方が、横につけた時と、縦につなげた時の違いに気付いていった。
理科は証明して、再現性があり、客観性が担保されなければならない。整理分析し、もう1回情報を収集する。これは体系表の「整理」「収集」「分析」に当てはまる。児童は毎回変わらない要件で実験し、情報収集することが大事であることを認識した。
情報を分析することがメインの授業でも、メタ認知を大事にして学習を意識すると、自分たちの実験方法を見直す姿が見られた。さらに情報の整理といった身についた力を、国語など別の教科に活かそうとする姿もあったという。
教育家庭新聞 健康・環境・体験学習号 2024年9月23日号掲載