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図書館

アクセシブルな社会を目指して~エファシンポジウム2024開催

2024年8月1日

『アクセシブルブック はじめのいっぽ~見る本、聞く本、触る本~』(ボイジャー刊)の出版を記念し、NPO法人エファジャパンは「エファシンポジウム2024 アクセシブルな社会へ~本の飢餓の解決に向かって~」を対面とオンラインで6月15日に開催した。

シンポジウムの様子


【基調講演】

「アクセシブルブック はじめのいっぽ~見る本、聞く本、触る本~」 ボイジャー刊

著者の一人である青山学院大学総合文化政策学部非常勤講師の宮田和樹氏は「なぜ、今、アクセシブルブックに注目するのか」と題し、書籍のダイジェスト報告を行った。

本書は、視覚などの障害のため、印刷された本を読むのが困難な人や支援者・専門家に取材を実施。馬場千枝氏や萬谷ひとみ氏ら3人による共著で、読みやすいように配慮されたアクセシブルブックを多くの人に知ってもらうねらいがある。読書を取り巻く社会背景がどのように変わってきたかを取り上げている。

第1章「アクセシブルブックって何だろう?」では、音声で読み上げる「オーディオブック」、端末画面を操作しながら音声で読み上げる「マルチメディアDAISY」など、さまざまなアクセシブルブックを紹介。

第4章「デジタルなアクセシブルブックの規格と技術」では電子書籍の形式を紹介しながらデジタル出版の現場を取材。デジタル図書を学校や図書館に無償で提供している事例などを取り上げた。

本書ではアクセシブルブックに関わる多くの人に取材し、その現状をありのまま伝えることが課題の解決につながっていく、としている。


【シンポジウム】

2019年6月に読書バリアフリー法が制定された。モデレーターである専修大学文学部教授の野口武悟氏は、読書バリアフリー法制定から5年間の動向を語った。

書籍全体に対し視覚障害者が読める書籍の割合は、先進国で7%程度、開発途上国では1%未満に過ぎない。読むことに困難を抱えている人が本を「買う自由」や「借りる権利」を確立するため各国で法整備や環境整備が進められている。

日本では人口に占める高齢者の割合が約3割となり、誰もが読みづらさを感じる状態になると予測される。読書バリアフリーを自分ごととして捉えることが大事だ。

日本点字図書館館長の立花明彦氏は視覚に障害のある人を対象とした同館の取組について紹介した。1940年11月に開館し、1958年に録音図書の製作を開始。2023年度の利用実績は登録者数が1万2876人、蔵書数は点字図書8万5904冊、録音図書5万1978巻にのぼる。今後は視覚障害者にとって、単に本を借りたり、多くの情報が得られるだけでなく、日常の困りごとを解決したり、利用者が安心できるオアシスのような存在となることを目指す。

アクセシブル・ブックス・サポートセンター・センター長の落合早苗氏はアクセシブルな電子書籍の普及に向けた取組について語った。

2020年7月、日本書籍出版協会にAB(アクセシブルブック)委員会が設けられた。日本出版インフラセンター(JPO)では出版書誌データベース「Books」をアクセシブルブックに対応するように検討。2023年4月にはアクセシブルブックサポートセンター(ABSC)が正式に発足した。

ABSCの活動は①アクセシブルブックに対する出版業界内外の理解促進、②自動音声読み上げ「Text to Speach」(TTS)の推進など。

エファジャパンの鎌倉幸子氏はカンボジアをはじめとする開発途上国での支援状況を説明した。

現在、開発途上国では「本の飢餓」が問題となっており、カンボジアなどは本の出版自体が少ない。ポル・ポト政権下では大量の本が燃やされ、内戦終了後にカンボジア国立図書館に残されたクメール語の書籍は約500冊だけだった。

エファジャパンは物・場所・人を育てる活動を展開。「物」としてはクメール語でのデジタル図書の開発など、「場所」では移動図書館など子供たちが安心して過ごせる場所を提供。「人」については子供の障害について理解し、その特性にあった対応ができる教員などの育成に努めている。

 

教育家庭新聞 健康・環境・体験学習号 2024年7月15日号掲載

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