東京都江戸川区立第二葛西小学校(平川惣一校長)では、2023年12月および2024年1月に、1、2年生を対象に学校図書館で「調べる学習チャレンジ」の授業が行われた。講師は(公社)全国学校図書館協議会・学校図書館スーパーバイザーの藤田利江氏。
藤田氏が出前授業で展開する「調べる学習チャレンジ講座」は、自分で調べたいテーマを決め、調べ、まとめる、探究型学習のプロセスを短時間で体験できるものだ。
子供たちは学習の流れに沿って、色違いの3枚のカードに記入する。自分で調べたいことを決めて「しりたいことカード」に。次に知りたいことが載っている本を図書館で探し、本の中で見つけた部分を「そのままカード」に抜き書きし、自分が感じたことや分かったことを「おもったカード」に記入していく。その過程で、本の探し方、出典の明記、本の内容と自分の考えを分けて書くことを体験する。
3枚のカードを1枚の画用紙に貼り、まとめが完成。授業時間1~2コマの中で、調べる楽しさや作品をまとめる達成感を味わえる。
今回、第二葛西小学校で同講座に取り組んだのは、1、2年生。取材した12月15日は2年生3クラスが取り組んだ。今回は1コマの時間内で答えを見つけ、分かったことを書くまでを全員がやり遂げることを目指す「調べる学習チャレンジ講座」`れんしゅう‘バージョンを行った。
`れんしゅう‘バージョンではテーマをあらかじめ用意。「イチゴのたねは どこにあるの」「サボテンには どうして トゲが あるの?」等30のテーマの中から児童が選んで取り組む。調べたい本が見つからないこともあるので、該当する内容が記載された本のコピーも準備する。今回は『辞書びきえほん 科学のふしぎ』(陰山英男/監修 ひかりのくに)のコピーを用意した。
藤田氏がスライドを使って本の探し方、カードの書き方などを説明した後、児童は用意されたテーマから自分の調べたいことを決めてスタート。
2年5組の児童たちはすぐに書架で本を探し始めた。普段から授業で学校図書館を活用しているという。必要な本が見つかれば自分の席に持って行き、カードに記入。またはコピーを選んで同様の作業を行う。
児童たちは静かにカードに記入していく。授業の終わりには「5つ(のテーマ)できた!」「家に帰って調べたい」と話す児童もいた。
講師を務めた藤田利江氏は神奈川県で小学校教諭兼司書教諭を務めた後、2007年東京都荒川区教育委員会学校図書館支援室に勤務。その後、神奈川県大和市、東京都江戸川区の教育委員会で学校図書館担当として勤務したほか、各地で学校図書館の支援を行ってきた。
「調べる学習チャレンジ講座」は2000年代初め頃、神奈川県座間市立図書館からスタート。探究学習の導入に適した実践として、希望があれば全国各地の学校や公共図書館、教職員向けの研修会も実施。毎年継続している学校や公共図書館もある。多い時で1年間で200回近く実施した年もあった。
今回の第二葛西小学校の授業で同講座は通算800回目を迎えた。同校でも2016年からコロナ禍の2021、22年を除き毎年藤田氏を招き同講座を実施している。
藤田氏は、小学校でチャレンジ講座および学校全体で調べ学習に取り組んでいった子供たちが、中学生になって取り組んだ調べ学習等の作品を見る機会もあり、「自分の考察や、これからさらに深く知りたいこともしっかり書けるようになる。小学生の時の取組が中学生の学びに活きてくる」と感じている。
「本や資料を使った学習が初めて、という子供たち1学級30人余りを、担任一人で指導することは難しい。そこで初めて取り組む際に、外部講師や司書教諭、担任、学校司書、見学にきた先生方など、複数の大人が子供一人ひとりに丁寧に関わることで、子供たちが調べるコツをつかむことができる。それがその後の調べ学習につながる」。今後も学校図書館を活用した探究的な学習の種を蒔く活動が続く。
教育家庭新聞 健康・環境・体験学習号 2024年2月19日号掲載