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身近な自然から世界に目を向ける~第55回全国小中学校環境教育研究大会(東京大会) 第59回東京都小中学校環境教育研究発表会 開催

2024年3月1日

全国の小中学校による環境教育の実践や研究成果が発表される「第55回全国小中学校環境教育研究大会(東京大会)」および「第59回東京都小中学校環境教育研究発表会」が1月26日、東京・品川区のエコルとごしで開催された。都市部、自然豊かな地域、それぞれのアプローチで児童らの環境保全意識の育成などの多様な実践が紹介された。主催=全国小中学校環境教育研究会、東京都小中学校環境教育研究会。

1898年~2023年の9月の平均気温を入力。さらに2112年までの予想を立てた。いずれは気温が下がる、と予想する生徒もいた

1898年~2023年の9月の平均気温を入力。さらに2112年までの予想を立てた。いずれは気温が下がる、と予想する生徒もいた

宇検村立阿室小中学校の発表では、地域との連携、各教科における取組といった多様な実践を紹介した

宇検村立阿室小中学校の発表では、地域との連携、各教科における取組といった多様な実践を紹介した

研究主題は「持続可能な社会づくりのための環境教育の推進 環境教育によって育む学力と環境保全意識」。4年ぶりに対面で開催し、オンライン配信も行われた。

2023年は世界の平均気温が観測史上最も高かったこと、7月に国連のグテーレス事務総長が「地球沸騰化」と表現したことなどを受け、今回の大会では気候変動に関する取組も注目された。

文部科学省初等中等教育局教育課程課専門官・麻田卓哉氏、環境省大臣官房総合政策課環境教育推進室長・東岡礼治氏も登壇。

環境省では環境教育等促進法に基づく環境教育等の推進に関する基本方針の見直しを進めており、改定案のパブリックコメントの募集に関しても紹介した。(募集期間21日~32)

【口頭発表】

100年後の気温を児童生徒が予測する

東京都小中学校環境教育研究会では環境教育の単元開発を行っている。今回は`100年後の気温を予測しようとして教材を開発。地球温暖化に対するさまざまな課題を一つの繋がりとして捉える資質・能力の育成を目指し、小学校2校、中学校2校が実践授業実施校として取り組んだ。

気象庁のこれまでの最高気温データをもとに、100年後の最高気温や気候変動の予測をすることで、子供たち自身が地球温暖化について自分事として捉え、環境保全意識の向上を図る。対象学年を小学校4年生から中学校3年生とし、多くの教科・領域で使用できるものとした。

▽小学校4年・総合的な学習の時間「グリーンカーテンプロジェクト」…1学期にグリーンカーテンの意味を学び観察を行った。2学期に水やりをしたにもかかわらず、グリーンカーテンが上手くいかなかった原因に関心を持ち、地球温暖化について調べていく。

▽中学校2年・理科「地球の大気と天気の変化『地球をとり巻く大気のようす』」…気象の単元に地球温暖化に関する内容を盛り込んだ。天気について学んだのち、地球温暖化がなぜ起こっているのか、それについての対策も考える。

小学校・中学校共、気象庁のHPのデータから、9月の平均気温のグラフ(18982023)を提示し、今後どのような気温になるか、各自予測したグラフを作成した。

発表した同会研究部長・鈴木元(げん)(東京都・町田市立小中一貫ゆくのき学園校長)によると「生徒の65%が気温が上昇し続ける、と予測した一方で、途中から低下傾向になる、とした生徒も30%程いた」という。現在人間がさまざまな対策をとっているので「いずれ気温が下がるのではないか」と楽観的に考えるケースもあったようだ。

授業の前後では、小・中学校とも児童生徒の意識調査を行っている。項目「地球温暖化を他の人に説明することができる」では事前が564%、事後が673%と大きく上昇するなど、肯定的な回答率が上昇していた。自ら予想を立てた上で、その根拠を調べ、対策を主体的に考える授業を行ったことで「自分事として捉えることができるようになった」。

一方で、発達段階によってはより難しく捉えてしまうという課題も残ったという。

奄美の自然・文化を学ぶ
SDGsと環境教育

世界自然遺産の島である奄美の自然・文化を活かした実践を紹介したのは、鹿児島県大島郡宇検村立阿室小中学校(中村正治校長)。研究主題は「持続可能な社会づくりに向けて、自分の考えをもって、行動し、表現・発信する児童生徒の育成」。環境教育担当の岩切敏彦教諭は「児童生徒がふるさとに誇りを持ち、自然や環境・文化について考え、学び、発信することは大きな教育的価値がある」とする。

地域人材や専門家と連携した稲作「阿室米」作り、学校の前を流れる川の水質調査、さらに世界自然遺産登録イベント発表、国語や音楽など各教科との連携などに取り組んでいった。カリキュラム・マネジメントの充実も大きなポイントだ。

岩切教諭は「持続可能な社会の創り手となる人材の育成は、学校教育と社会教育の関連を図り、生涯教育の観点で捉えていく必要がある」と話す。

河川・水教育で広げる
アクティブ・ラーニング

北海道帯広市立豊成小学校(平野司校長)では、「キャリア教育」を土台とした学習を行っている。河村晋一郎主幹教諭は、校舎の傍を流れる「機関庫の川」を利用した学びを紹介。校舎移転・新築の際、帯広市が学習材として活用できるように、学校にテラスを作り、すぐに川に入ることができるように図らった。地域ボランティアの力も大きい。「川は、子供たちが探究したくなる素材に溢れている。疑問を解決したり、川のためにしたいことに取り組む中で、豊かな環境を大切にしようとする心を育む」。

なお大会紀要にて小・中学校計5校による誌上発表も掲載されている。

気候危機に向き合う日本の子供たちの意識は
江守氏(右)を招いて

江守氏(右)を招いて

大会後半は、江守正多氏(東京大学未来ビジョン研究センター教授 国立環境研究所 地球システム領域 上級主席研究員)を講師に招き、「気候危機にどう向き合うか」をテーマに講演も行われた。参加者とのディスカッションでは、日本の子供たちが実は、環境問題について世界と比較して危機感が薄い、といった話題などが議論された。

「環境教育・ESD 実践動画100選」公開

環境省では学校や社会教育施設等で行われている優良事例を「環境教育・ESD実践動画100選」として選定し、昨年11月より公表している。「授業作りの参考にして欲しい」(環境教育推進室長・東岡氏)

http://eco.env.go.jp/jissendoga/kokai/

今年度から開始。今後も事例を募集していく

教育家庭新聞 健康・環境・体験学習号 2024年2月19日号掲載

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