家電などの梱包の緩衝材、食品の宅配の保冷ボックス、ビーズクッションの中身など、暮らしの中でさまざまな形で使われている発泡スチロール(EPS)。発泡スチロール協会(JEPSA)では、発泡スチロールの特長やその環境適正、リサイクルへの取組について、中・高校生向けの学習プログラムを実施している。今年度は1月末現在ですでに61校が同協会を訪問。全国各地から教育旅行の一環として同プログラムに参加している。
同協会では以前から中・高校生向けに環境学習プログラムを実施。東京・秋葉原の同協会を会場に、10人程度を1グループとして、発泡スチロールの特性やリサイクルの重要性について、講義や実験を通して学習する内容となっている。
新型コロナ感染症拡大の影響によって一時は参加校・実施回数が減ったものの、2022年度は9件78名に回復。2023年度は年度当初30件を見込んでいたが、2024年1月末時点で61件、610名が参加し、予想を大きく上回った。校種別では中学校45件、高等学校15件、大学1件。教育旅行の一環として、生徒が直接申し込むケースが多いという。
プログラムでは、発泡スチロールの原料となるビーズに熱を加えて膨らませる動画を鑑賞して、製品全体の98%が空気で省資源素材であること、また発泡スチロールの緩衝性などを体感する実験のほか、参加校の地元のリサイクル状況などについても触れる。
ちなみに使用済み発泡スチロールの再資源化率は、2022年度の実績で92・3%となっている。近年は住宅の断熱材としての利用や土木関係(盛土ブロックなど)の活用も進んでいるほか、学校の窓に貼ることで断熱効果を得る取組も始まった。プログラムでは、発泡スチロールの「断熱性」「緩衝性」「軽量性」「省資源性」「耐久性」「リサイクル性」「加工性」という7つの特性と、それを活かしたさまざまな分野における活用について解説する。
「発泡スチロールのリサイクル率を高めることと並行して、プラスチックを使い捨ての素材としてではなく、長く大切に使う資源であるという視点がこれからは必要」と同協会広報部・佐藤喜一氏は話す。
なお同協会では全国に会員企業が119社あり、児童生徒向けの工場見学も受け入れている。今年度は1月末時点で40件981名が参加した。発泡スチロールに関連した啓発活動であると同時に、キャリア教育としても好評という。
昨秋から普及・促進を開始したのが、新感覚のスポーツエンターテインメントゲーム「STACKING BOX(スタッキングボックス)」だ。発泡スチロールの箱を積み上げ、タイムや高さの記録を競う。
発泡スチロールの箱を製造する成型加工メーカーでは、製造された箱を積み上げて保管する。同協会ではメーカーのプロフェッショナルを対象に、技術向上・正確な作業の確立・安全意識の高揚を目的に競技会「スチレンピック」を開催している。
「スタッキングボックス」は、「スチレンピック」をより広く多くの人に楽しんでもらうために新たにルール設定などを行い、ゲーム性を高めたもの。箱一つが約100㌘の魚箱を使用し、10個を1段として記録に挑戦する。積み上げた箱を運ぶ「HAKOMOVE(ハコムーブ)」と、箱をとにかく高く積み上げる「HAKOZUMI(ハコヅミ)」の2つのチャレンジゲームがあり、98%が空気という発泡スチロールの箱を使用するので、安全で誰でも安心して挑戦できる。
昨年10月から動画を公開。体操界の池谷幸雄・直樹兄弟をはじめ、各界で活躍するアスリートたちによるチャレンジムービーを3月まで毎月更新している。(特設サイトhttps://www.stacking-box.com/)
公式サイトでは、挑戦するスポーツアスリートを募集している。今後体育館がある高校や大学の学園祭や体育祭、市民祭といった場面での実施に広げていく計画だ。
今年5月には愛知県犬山市の「市制70周年記念事業」のイベントのひとつとして市民がチャレンジする予定。
1月1日に発生した能登半島地震では、1か月を過ぎた今も多くの人が避難所で過ごすことを余儀なくされている。一方で、義援物資は交通渋滞や仕分けの手間などから直接現地に持ち込むことができない。
そこで全国各地に会員企業がある同協会では1月5日、石川県・富山県の義援物資の受入の登録を行った。
義援物資として提供するのは、断熱材に使う発泡スチロール板で、布団などの下に敷くと寒さを和らげることができるものだ。
1月12日には能美市役所(石川県)より依頼があり、翌日13日には市内にある同協会会員企業が2次避難者のための断熱材として、3×6サイズ(ほぼ畳一畳サイズ)400枚の発泡スチロール板を提供。冬期の避難所生活の一助とした。
教育家庭新聞 健康・環境・体験学習号 2024年2月19日号掲載