全国小学校家庭科教育研究会(加園正子会長)の第60回全国大会・神奈川大会が10月27日、「豊かな心と実践力を育み、未来を拓く家庭科教育」をテーマに、研究主題を「自らの生活を豊かに創造する子どもの育成」とし、公開授業と全体会が横浜市内で開催された。
テンネー記念ホールで開催された全体会場では、加園会長が開会あいさつの中で「家庭科における『見方・考え方』を働かせ、より質の高い学びの実践に向けて①資質・能力を育むためのカリキュラム・マネジメント、②主体的・対話的で深い学びに向けた指導と評価の工夫、③誰もが安心して豊かに学ぶための今日的な課題への対応について研究をすすめ、発展させることができた」と振り返った。
続いて行われた地区研究発表・研究協議では6地区が発表した。
東京地区は「よりよい生活を自ら創り出す子供の育成」を主題に北区立王子小・小野寺愛教諭、同田端小・北原千咲教諭が担当。児童が自らの生活をふり返り、作りたいものに積極的に取り組める「布を用いた製作」を中心に、指導の工夫を検討。ミシンの安全な取扱い、製作過程を通じて課題解決の姿を身につけさせることなどを指導目標とした。ペアやグループでの協働学習、ICT端末で動画を活用した指導などを工夫した。
北海道・東北地区は山形県鶴岡市立渡前小・小野寺有紗教諭が「家庭・地域・社会とつながり、学びを生かす子どもの育成」をテーマに発表。地域や異世代との関わりへの興味や経験が不足している児童の実態から、同テーマを設定、授業改善に取り組んだ。
6年生「家族のために、栄養バランスを考えた1食分の献立を立てよう」では自分の食事のために家族がしてくれたことを考え、自分の食生活の問題を考えさせた。そして「家族のために」をゴールに献立を作成。その結果「栄養バランス」だけでなく祖父母のために「切り方を工夫」「家族が作った畑の野菜を使う」など新たな視点で考えることにつながった。
近畿地区は「他教科等を生かす家庭科」を主題として、和歌山・串本町立出雲小・前田亜由美教頭、同田辺市立上秋津小・中根真富教諭が発表。
家庭科「すばやく換気」では、段ボールやPETボトルで手作りした実験装置で、4年理科の「燃焼の仕組み」を見える化。空気の流れと出入口の関係を理解させる等の指導を工夫した。日本の伝統的な衣服・住居が気候・風土と密接しており、今日でもエネルギーの節約に関係することから、日常生活に目をむけるきっかけになった。
その他、東海・北陸地区は名古屋市立千代田橋小・板倉眞代校長、同豊治小・早川加代校長、同・鳴海小・熊谷佳代校長が「人と関わりながら、生活をよりよくすることができる児童の育成」、中国・四国地区は島根・浜田市立石見小・新田倫太郎教諭が「より良い生活を願い自ら学び、考え、実践しようとする子供の育成」、九州地区は「家族の一員として、家庭で楽しく実践しよとする子供の育成」をテーマに長崎市立古賀小・田中彩里衣教諭が発表した。
教育家庭新聞 健康・環境・体験学習号 2023年11月20日号掲載