SDGsの幅広い課題を、児童生徒が“自分ごと”として捉え実践に結びつけるためには、学校でどのように取り組んでいけば良いのだろうか。今年度から全国小中学校環境教育研究会の会長に就任した關口寿也氏(東京都多摩市立連光寺小学校長)に話を聞いた。同研究会はESD(持続可能な開発のための教育)について、長年にわたり教員研修会や授業実践の開発などに取り組んでいる。
「よくあるのが、SDGsの17のゴール1つずつの内容を、授業で解説するというスタイル。しかしゴールは目指すものであり、それを解説して終了ではなく、ゴールに向けた実践や行動変容に結びつけることが重要なのではないでしょうか」
「特別な授業のプログラムを組む必要はなく、学んできたことの最後にSDGsを意識させる。SDGsの目標、さらに細かいターゲットのどこに該当しているのかを照合させてみる。『この単元で学んだことはSDGsの10―3と一緒だね、SDGsに貢献できたね』と話しあうことの積み重ねが良いと思います」
「入り口は、それぞれの学校の地域学習で良いと思います。例えば本校の場合、1年生の生活科「あきとなかよし」の単元では、校外に出てどんぐりや落ち葉を集める活動を1か月ほど繰り返します。さまざまな色・形のどんぐりを使って工作やゲームをする。地域にあるもので感性を育むことはとても大切です。そして『こんなに自然が豊かであることはSDGs15の〈陸の豊かさ〉であり、その秋を大事にしていこうね』と話すことで、SDGsが身近になる。地域を探究し、そこから世界へと視野を広げて振り返ると良いと思います」
「あるいは、先生方の悩みや不安もテーマにできます。例えば地球温暖化や金融、介護の問題、エネルギー問題や廃プラスチックなど、さまざまな社会問題を題材にしたプログラムの場合、先生自身もゴールが見えない。授業で探究していく中で、先生も児童生徒と同じ立場で学びを進めることができます」
「“何を教えるべきか““最終的にどのような価値観があるのか“」が明確であることは、一見教えやすいかもしれないが、現在の学習指導要領で推進している探究学習には、決められたルールや明確な答えはありません。その学びのパラダイムシフトに教員も慣れる必要がある。例えば5年生の社会科で、日本の工業の柱である内燃機関の自動車工場を見学に行きますが、10年後はEVシフトが進んでいるでしょう。世の中の動きも見ながら学ぶ必要があります」
「外部との連携をたくさん取り入れることがお勧め。教員にも刺激になり、授業プランも多様になります。学校の中だけで完結しようとすると対応が遅くなってしまう事柄がどんどん出てきています。連携する外部や講師をどう見つけていくのか。地域のネットワークを活用する。銀行の方に金融の話をして頂く、旅行企画会社の方から近隣の企業の情報を収集する、展示会場に足を運び企業の方と話してみるなど、さまざまな方法でつながることができます。本校は各企業、市内の学芸員、NPO法人、国交省の京浜河川事務所等と長年連携して頂いています」
「外部の方に来て頂くと、子供たちが考えている社会的な『課題』について、実は大人たちも真剣に考えて取り組んでいるということが子供たちに伝わり、より身近になります」
教育家庭新聞 健康・環境・体験学習号 2023年11月20日号掲載