<めしを炊く>、いい言葉じゃないか。一番のおおもと、生きていくことの根っこにある<めし>さえあればなんとかなる、そう思える。やるだけやってあとは天まかせ。なんとかなる、そう思って謙虚に、でもたくましくご飯を食べて生きていく(本書「はじめに」より)。
いろいろな人の人生に共感し応援する食を提案してきた自称「めし炊き」の著者が綴る18編のエッセイと30のレシピ。
子ども食堂で子供たちがつくったひき肉チャーハン。年末の炊き出し`大人食堂’に彩りを添えた炒めなます。子育てを終え初めての一人暮らしをする長年の仕事仲間に励まされながら`自分のためだけにつくる’高野豆腐と野菜の揚げ煮。晩年にかつての家庭に帰りたがった認知症の父を思いながらつくった鶏胸肉の塩麹焼き……。病を得て生きるステージが変わった自身の生とも向き合いながら、今を生きる全ての人に贈るエール。
巻末には詩人の伊藤比呂美氏の寄稿も。親友だからこそ描ける`怒涛の社会派’の素顔にも注目したい。
教育家庭新聞 健康・環境・体験学習号 2023年10月16日号掲載