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図書館

環境の整備で学び方が変わる 「『子どもの学び』市民フォーラムin 東京」の実践発表から

2023年10月23日

学校図書館で積極的にICTを活用し、探究活動のための資料や学習環境を充実させたことで、実際にどのような子供の学びが行われるようになったのか。今後何が求められるのか。「学校図書館法公布70周年記念『子どもの学び』市民フォーラムin東京」が9月23日に都内会場とオンラインで開催された(主催=NPO法人学校図書館実践活動研究会)。主催者名誉顧問の銭谷眞美氏による挨拶の後、実践発表、専修大学文学部・野口武悟教授による提案、文部科学省初等中等教育局・大滝一登視学官による記念講演が行われた。ここでは公立小学校と私立中学・高等学校による実践発表を紹介する。

青木氏の実践発表。1年生のアサガオの観察は、写真をなぞることで児童の描き方も変化していた

青木氏の実践発表。1年生のアサガオの観察は、写真をなぞることで児童の描き方も変化していた

求められる情報活用能力の育成
群馬県甘楽町立福島小学校 青木いず美司書教諭

演題は「GIGAスクール構想から3年 ~子どもたちの学びと学校図書館の変化~」。同校では3年前から司書教諭の活動時間として1時間が設定され、青木司書教諭は1年生を担任しながら、情報活用能力のスキル学習の授業の担当や授業支援を行っている。「GIGAスクール構想により、基本的な今までの図書資料を使った授業支援に加え、電子書籍やデジタル資料が加わり、情報活用能力の育成がより重要になった。」

館内外のICT環境整備

同校では2017年度に学校図書館の蔵書管理システムを導入。2020年度の3学期に蔵書検索ができるカーリル学校図書館支援プログラムを導入し、町内小中学校と町立図書館の蔵書検索も可能になった。

電子書籍はポプラ社の「Yomokka!」とポプラディアの電子版百科事典「Sagasokka!」を導入。加えて昨年81日より町立の「かんらまち電子図書館」が稼働を開始し、町内の小中学生には学校用として中学校卒業まで利用できる電子図書館のIDが発行された。9月には町内の児童生徒、教職員が登録を完了している。

同校の学校図書館にはWi-Fiが整備され、児童は11台端末を持ち込み紙の図書資料と併せての授業が行われている。昨年度末、プロジェクターとスクリーンが学校図書館に整備されたことで、館内での授業がより実施しやすくなった。

環境整備によって児童の学びも変化した。

全校読書は、昼読書で紙の書籍と電子書籍を両方読むようになった。学校図書館で紙の本で1巻目を読み、自宅では電子書籍で2巻目を読むなど、子供たちは状況に合わせて利用している。電子書籍があることで学校図書館の利用が減ることはなく、2つの図書館を使う形となり、読書量は倍増した。読書記録は従来の手書きのものに加え、「Yomokka!」のランキング機能を利用して「今月のベスト3」を作成・校内公開もする。簡単にでき、皆で共有できるのがデジタルの良さだという。

授業では他県の学校と発表交流も。「オンラインでの交流は、単元のゴールの相手意識や目的意識が明確になり、今まで以上にモチベーションが向上し、かつ継続することが増えるようになった。」

情報教育、校内研修担当 司書教諭が連携する

現在は11台端末をいかに効果的に使うかを考える段階になった。そのため、司書教諭は情報教育主任、校内研修主任と連携しながら、著作権やICTスキルの研修を実施している。最近ではCanvaPadletなども積極的に活用し、次のような学びに変化してきた。①調べものは紙の図書資料を基本に、デジタル書籍や、信頼できるサイトを利用する、②ICTの活用で遠方の人とつながる、③まとめ方の選択肢が増えた、④成果物の整理保存の仕方が変化し多様化してきた、⑤クラウド化により協働学習が容易になり、共同編集も可能になった。

同校では「これらの学習は、デジタルのスキル指導だけでは成立しない」との考えのもと「基礎的な学び方の上に、デジタルのスキルが今まで以上に加わった」と捉え、1年生から段階的に学び方の指導を行う。著作権教育やメディアリテラシー、デジタルシチズンシップ教育の充実が課題。これらの学びに対応できる学校図書館を目指す。

本フォーラムでは1年生から6年生までの実践を紹介した。

探究活動に対応する資料収集と環境整備
中央大学附属中学校・高等学校 平野誠司書教諭

11台端末で広がる学校図書館活動 ~アナログとデジタルを融合した探究活動への支援~」として同校学校図書館の変遷と今後の課題を紹介した。

探究活動を重視する同校で学校図書館の果たす役割は大きい。本館と分館があり、特に本館は学習センター・情報センター機能の充実を図り、情報探索・情報収集のハブとなっている。そのため収集する資料も調査や研究に対応したものを最優先とし、館内の環境整備はクラス単位の授業を前提に行ってきた。

図書資料では、探究活動の入門書として「新書」を充実させたほか、調べる時に役立つ一般書から専門書まで収集。デジタル資料はオンラインデータベース、電子書籍を導入、信頼できるネットワーク情報資源の提供(公共機関の作成するサイト等のリンク集を作成)を行っている。

OPAC(所蔵資料検索)のカスタマイズと校内利用にも力を入れた。図書館資料の検索の際に的確・確実にヒットするよう、キーワードを同校独自で日々追加して書誌データを整備するなどして現在に至る。

館内の環境整備は1990年代末から進めてきた。「探究活動で学校図書館が活用されるようになったのは、ICT化が大きなきっかけだった」という。

利用者用PC導入は2000年から。プロジェクターやスクリーンを整備。ノート型PCの台数を徐々に増やしたのは、探究学習で同館の情報提供サービスを利用するため、11PCのニーズが高まったからだ。

さらに校内ネットワークの活用に着目。学校図書館のポータルサイトを立ち上げ、2002年に校内ネットワークに接続。OPAC、電子書籍、オンラインデータベース各種、リンク集などに校内のどこからでもアクセス可能となった。中学生・高校生共に授業で最もよく使うのがこのポータルサイトで、情報検索で迷うことなく、まずはここから調べられる道標となっている。

この頃から「学校図書館なら検索サイトよりも情報が見つかる」という認識が生徒・教職員間にも広がっていった。

探究活動の全プロセスが学校図書館内で展開可能となり、現在あらゆる教科の授業が館内で行われている。2021年度にはカリキュラムの改訂が行われ、教科横断や、分野融合をより強化した学校設定科目「教養総合」がスタート。中学3年生~高校3年生まで継続的に展開されることとなった。科目を設定した担当者は「この学校図書館があったからこそこの設定科目を作ることができた」と話したという。

校外からアクセス可能に

現在、「LibFinder(ライブファインダー)」によるOPACを活用して、学校図書館の提供するサービスをクラウド型にリプレイス中だ。クラウド型にすることで、校外からでも生徒の11台端末やスマートフォンからも利用できるようになる。

今後はオンラインデータベースなどの同時アクセス数などが課題となってくる。電子書籍については公共図書館と公立の学校の連携が進められる中、「私立の中学校・高等学校も、今後連携できるようアプローチも必要」としている。

教育家庭新聞 健康・環境・体験学習号 2023年10月16日号掲載

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