私たちは気づかないが、雪や氷には多様な生物が存在する。なぜ生きていけるのか。どのように生活しているのか。
ユキムシとは、セッケイカワゲラやクモガタガガンボのように、雪の上で暮らす小さな昆虫をさす。一般に多くの昆虫は、冬を卵や冬眠状態で過ごし、気温の高い夏が好きな生物という印象がある。しかし、ユキムシは、極地や高山を中心に、積雪・氷河などの低温・不毛の極限環境に暮らす。雪の中の餌を食べ、上流に移動して産卵するなど、環境に適応して生活する。
日本の雪の上で暮らす小さな虫の研究から、ヒマラヤでの氷河生態系の発見をへて、雪氷生態系が地球規模の環境変動におよぼす影響、過去の気候変動や生命進化などへ研究は広がる。地球外生命の可能性にも言及。
雪氷は、太陽系や宇宙のほか、数十億年前の地球にも存在し、果てしない時間と空間を超えてつながる現象である。新しい学問分野「雪氷生態学」は、好奇心を刺激する未知の世界。地球温暖化が顕在化するに伴い、関心を集めている。
教育家庭新聞 健康・環境・体験学習号 2023年9月18日号掲載