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『雪と氷にすむ生きものたち 雪氷生態学への招待』竹内望、植竹淳、幸島司郎/著

2023年9月18日
BOOK REVIEW

小さな虫から広がる未知の世界

竹内望、植竹淳、幸島司郎/著丸善出版 A5判 194頁 3080円

竹内望、植竹淳、幸島司郎/著
丸善出版
A5判 194頁
3080円

私たちは気づかないが、雪や氷には多様な生物が存在する。なぜ生きていけるのか。どのように生活しているのか。

ユキムシとは、セッケイカワゲラやクモガタガガンボのように、雪の上で暮らす小さな昆虫をさす。一般に多くの昆虫は、冬を卵や冬眠状態で過ごし、気温の高い夏が好きな生物という印象がある。しかし、ユキムシは、極地や高山を中心に、積雪・氷河などの低温・不毛の極限環境に暮らす。雪の中の餌を食べ、上流に移動して産卵するなど、環境に適応して生活する。

日本の雪の上で暮らす小さな虫の研究から、ヒマラヤでの氷河生態系の発見をへて、雪氷生態系が地球規模の環境変動におよぼす影響、過去の気候変動や生命進化などへ研究は広がる。地球外生命の可能性にも言及。

雪氷は、太陽系や宇宙のほか、数十億年前の地球にも存在し、果てしない時間と空間を超えてつながる現象である。新しい学問分野「雪氷生態学」は、好奇心を刺激する未知の世界。地球温暖化が顕在化するに伴い、関心を集めている。

教育家庭新聞 健康・環境・体験学習号 2023年9月18日号掲載

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