東京の大学生たちが福島へ–。子供たちへの読み聞かせ活動を行っている大学生たちが、この夏、福島県の子供たちへ、読み聞かせや手遊びの楽しさを届けた。大学生の部活やサークル活動が困難となったコロナ禍を経て、福島への訪問は4年ぶり。その間、活動を絶やさず、さらにその輪を広げていこうとしている。
明治学院大学(東京都港区)の「おはなしポップコーン」は、心理学部教育発達学科の学生たちが参加する読み聞かせサークル。同学科は、主に幼稚園や小学校の教員を目指す、あるいは特別支援教育に関心の高い学生が在籍している。「おはなしポップコーン」は2012年、同学科の授業での活動からスタートした。以来、絵本や本が好きな学生たちが集い、絵本の読み聞かせや紙芝居などのボランティア活動を行ってきた。
2020年、新型コロナ感染症の感染が拡大し、大学のさまざまなサークル活動もできない状況となった。
ただしおはなしポップコーンの活動は継続していた。対面での活動は難しかったものの、Zoomを活用し、絵本の紹介や読み聞かせの練習を行ったという。2年生の若林ゆうさんは「先生方や卒業生の方のサポートが大きかった」と話す。教員からの働きかけや、OBやOGがそれまでの活動内容を紹介したり、読み聞かせを実演してくれた。
本格的に活動を再開したのは昨年度から。絵本カフェや公園で読み聞かせ会を実施した。
そして今年度はメンバーに1年生5名を迎え、2年生5名、4年生3名と、教員3名で活動している。絵本が好きだから、教授に誘われたから、などのさまざまなきっかけで参加している。普段の練習は、絵本・紙芝居選び、読む時の基本ルールの確認、絵本ごとにあった読み聞かせ方法の相談、手遊びの内容の共有とその練習など。6月にはコロナ禍前に活動していた神奈川県内の小学校での読み聞かせ会を再開。夏以降も同じく県内幼稚園や公共図書館、都内小学校などで読み聞かせ会を行う予定だ。
9月1日、夏期休暇期間中の白金校舎にメンバーと教員らが集まった。9月11~12日、福島県相馬市を訪問する事前準備のためだ。現地で被災地支援を行っている団体チクタクプロジェクトの協力のもと、市立飯豊小学校をはじめ、学童、原釜幼稚園で読み聞かせ会をするほか、被災地を視察する。
相馬市におはなしポップコーンが初めて訪問したのは、東日本大震災から3年目となる2013年8月。以来2019年まで毎年訪れていた。コロナ禍を経て今年4年ぶりの訪問となる。
この日は「絵本はどのような順番で読むといいのか」「持っていく絵本や紙芝居はどれにするのか」「小学生にはこの絵本は簡単すぎるかな?」「この手遊びはだんだんスピードアップしながら繰り返すと子供たちが楽しめる」と話しながら、読み聞かせや紙芝居、パネルシアターなどのノウハウを共有。子供たちとおもちゃづくりを行うため、都留文科大学(山梨県都留市)から、泉宣宏特任教授を講師に招き、手作りおもちゃを試作した。さらに被災地も複数視察するため、その現状についての事前説明も受ける。
同学科元教授の岩辺泰吏氏は、サークル発足時から学生たちを指導してきた。この日も学生たちに絵本の読み聞かせのコツなどを伝えた。岩辺氏は「(サークル活動が)ここまで続いて嬉しい」と学生たちの熱意を喜ぶ。
おはなしポップコーンは現在、同学科の学生だけで構成されているが、今後は他学科からの参加も目指すという。本やお話の楽しさを伝える活動はさらに広がっていきそうだ。
教育家庭新聞 健康・環境・体験学習号 2023年9月18日号掲載