東京都葛飾区立常盤中学校(平岡栄一校長)は7月8日、三洋商事㈱を招き、中学1年生がSDGsについて学ぶ出前授業を実施。産業廃棄物のリサイクルに端を発した地球環境問題への取組を紹介したほか、ゴミ問題について生徒と一緒に考えるなど、幅広く学ぶ授業となった。今回授業を受けた1年生は、今後3年生まで同社の出前授業を予定している点も注目される。
授業を受けたのは1年生5クラスの157人。前日にSDGsとは何か、学年授業を受けたうえで、当日の授業に臨んだ。
講師を務めたのは、同社地球環境・未来創造部の石田公希部長、鹿志村愛氏、下谷優花氏。なお同事業部では「SDGsスクール」として主に小中学校への出前授業を行っている。
今回の授業は1校時・2校時にわたって実施された。まず三洋商事の紹介から。同社では企業などが廃棄したPCなどを手作業で細かく丁寧に分解し、高品質のリサイクル資源へと処理している。作業にはチャレンジド(障害者)の従業員も携わる。
また`働く場‘としてもさまざまな取組を行っている。以前は社員に昼食を提供していたが、残食が出てしまうためフードロス削減などの観点から現金支給へ切り替えたこと、地域清掃や海岸清掃の取組、また`従業員とその家族の幸せ‘を考えた手厚い福利厚生などを紹介した。
続いてさまざまな環境問題の中でも「ゴミ問題」についてフォーカスし、海洋ゴミやフードロスなどについて解説。生徒たちにクイズ形式で、講義で受けた内容について振り返りを行った。
質疑応答では生徒から「ゴミを減らす、明日からできる簡単な方法を教えて下さい」と尋ねられ、講師3人が実践していることを紹介。ハンカチを持ち歩きペーパータオルは使わない、新品ではなく中古品を買う(3Rのリユースの取組)、小分けの袋に入っているものではなくまとめて包装されたものを買う、マイバッグを使う等々。石田氏は「自分たちがやるだけでは意味がないと思うのではなく、一人ひとりの行動が大切」と話す。
また「仕事をする中で驚いたことはありますか」という質問も。
講師たちからは「産業廃棄物といっても、こんなにもまだ使えるものがゴミとしてたくさん出されているということを知って驚いた」「ゴミから、環境問題そのものに興味を持つようになった」といった回答があり、仕事を通して新しい課題に気付いたり、働く意義や楽しさについても生徒たちが知る機会となった。
出前授業終了後の3校時は、各学級で「エコとわざコンクール」(主催∥エコ・ファースト推進協議会、後援∥環境省)の作品づくりを行った。担任が環境問題についてスライドを交えながら話をした学級もあった。
今回の出前授業を企画した笹木健一朗教諭は「期末テストが終わり、生徒たちの気持ちのゆとりのあるタイミングを使って、きちんと環境問題やSDGsについて考えて欲しいと思い、この時期の授業を設定した」と話す。保護者とも共有できるよう、土曜日の学校公開日に行った。
同社による出前授業は今回授業を受けた1年生が2年生、3年生と、学年が上がる度に毎年1回実施する予定。
笹木教諭は「1回の出前授業で終わるのではなく、毎年実施することで意識付けを図り、環境を意識した実践の継続にもつなげたい。生徒だけでなく、教員、企業とお互いに成長し、毎年それを確認したい」と話す。「いずれはSDGsについての学びが学校の柱となるよう、学校全体に広げたい」と語った。
教育家庭新聞 健康・環境・体験学習号 2023年8月21日号掲載