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図書館

【実践紹介:静岡市立城山中学校】統計データを比較し考えよう 数学「箱ひげ図」で協働学習

2023年7月17日

データの分布のばらつきを可視化するとともに、複数のデータを比較できる「箱ひげ図」を、自分たちの興味あるテーマで作成してみよう――静岡市立城山中学校(杉山哲哉校長)における、数学の授業実践を紹介する。図書資料の統計データをもとに数学ソフトウェアでグラフを作成する過程で、他教科の学習、グループの共同編集によるプレゼン作成など、日ごろから生徒たちが学んでいることが総合的な力として発揮される授業展開となった。単元の授業実践を対象とした「第3回情報活用授業コンクール」(主催=公社・全国学校図書館協議会)優秀賞受賞。

データの分布のばらつきを可視化する「箱ひげ図」 (『中学校学習指導要領(平成29年告示)解説【数学編】p122より)

データの分布のばらつきを可視化する「箱ひげ図」
(『中学校学習指導要領(平成29年告示)解説【数学編】p122より)

「箱ひげ図とデータの活用」の授業に取り組んだのは、城山中学校の2年生。2021年度に初めて実施し、2回目となる2022年度は今年3月、全11時間の実践として行われた。

授業構想などの事前の準備は、2022年秋頃からスタートした。数学科の齋藤慶一教諭(勤務校当時)は三輪明香学校司書と、活動場所や市立図書館の団体貸出依頼、授業実施中の役割分担などの打ち合わせを行った。授業時には教育支援員も加わり3人で指導に当たった。

実際のデータに触れて興味のある分野を探す

まず教科書を用いた通常の授業で「箱ひげ図」について学習した。生徒たちは11台端末で数学ソフトウェア「GeoGebra(ジオジェブラ)を使って箱ひげ図を作成し、操作方法を確認した。教室での学習は5時間かけて行われた。

次に学校図書館に場所を移し、データ収集と発表用のスライド作成を次の流れで行う。①34人のグループで、図書資料からデータを選択し、テーマを設定(1時間)②GeoGebraで箱ひげ図を作成し、テーマ設定の理由や、箱ひげ図からわかること、感想などについてスライドにまとめる(3時間)

生徒たちはまず自分の興味のある分野からデータを探し出す活動から始めた。普段統計データの多く載った図書資料を手にとる機会は少ないが、今回、人口や産業、レジャー施設の入場者数といった、社会など他の教科で学習したことや身近な内容を見つけ、「データを見ること自体を楽しんでいるようだった」(齋藤教諭)という。箱ひげ図で比較するのに向いているデータはどのようなデータなのか、グループ内で議論するようすも見られた。

図書資料は学校図書館と静岡市立図書館のものを利用した。各種『統計白書』など統計データが多く載っているものを中心に選書したという。インターネット上のデータではなく図書資料を活用した理由として①複数のデータを一覧で見比べられること(複数年や複数都市など)②出典が確かなデータを選書することで、不確かなデータを用いた学習になりにくい、といった利点を挙げる。

齋藤教諭は「架空のデータではなく、実際の統計データに触れさせ、さらに統計ソフトを用いてデータ処理を行う実体験を得ること」を重視。実際にやってみることで、グラフの作成方法や見せ方について生徒が自分で考えられるようにしたという。ただ難点は生徒が興味を持ちやすい種類のデータに関する図書資料が少なかったこと。そこで社会や理科、国語などで扱われた内容から、生徒が知っている言葉が含まれる図書資料を紹介するなど工夫した。

共同作成・編集でグループ発表へ

各グループは、図書資料に掲載されたデータを分担してスプレッドシートに入力。これをGeoGebraに転記し、箱ひげ図を作成した。発表に向けてスライド作りなどのプレゼンの準備を進めていく。スプレッドシートやスライドは、共有設定をすることでグループ内で共同編集ができるようにしてある。

生徒たちはこれまでに国語や社会で学んだプレゼン作成のポイントを思い出したり、学校図書館のプレゼン作成に関する図書資料を参照して取り組む姿が見られた。最後に教室で、グループごとにまとめたスライドを使い、発表・質疑応答を2時間かけて行った。

「大人でも読み取ることが難しい統計データを読み、箱ひげ図に表し、スライドにするという課題に、生徒たちが熱心に取り組む姿に関心した」と齋藤教諭。「今後は“データを見やすく表すためにどんなグラフや図を用いたら良いかを判断する力を意識した単元展開も考えたい。私自身も生徒から学ぶことの多い実践だった」。

数学科 11台端末と学校図書館の活用は

同校の数学科では、指導者用デジタル教科書を大型モニタで提示することが多い。関数や図形の授業は、図やグラフ、証明について考える際に11台端末を利用している。手で書くことが難しい図やグラフの表示、データやグラフの処理、協働学習で意見交流を行う時などにも利用する。

また学校図書館を利用した授業は1年生7月にも行うほか、授業で扱う課題を学校図書館の図書資料から引用することも年に数回あるという。

教育家庭新聞 健康・環境・体験学習号 2023年7月17日号掲載

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