YA世代の古典の入門書。どんなに面白い物語も、その一部分だけではその面白さは伝わらない。古典も教科書の抜き書きで文法を学ぶだけで面白いわけがない。古典は外国語ではなく、私たちが使う日本語のちょっと昔風の文章であり、ゆっくり読めば理解できることも多い。昔の人も現在の私たちと同じように、泣いたり笑ったり恋したりしていることを知ると、古典は一気に興味深くなる。和歌、土佐日記、伊勢物語、源氏物語、平家物語、枕草子、徒然草、風姿花伝、日本文学のユーモアを紹介する。
『枕草子』には「お説法のお坊さまは、顔の良いのがよい」とある。現代のアイドルにハマることに通じる感覚だろうか。清少納言は、お坊様に罰当たりな発言だなどと考えずに率直に書き残す。
『風姿花伝』第一には「能楽の稽古は、だいたい七歳の時分に始めるのがよい」。この時期は、基礎の基礎だけを「いやにならぬように褒めて教えよ」という。世阿弥は合理的な教育理念を持ち「教える対象しっかり観察して資質をよく見極めるのが重要」とする。
教育家庭新聞 健康・環境・体験学習号 2023年3月20日号掲載