万葉集はおよそ七~八世紀の、約4500首の歌が収められた、日本最古の和歌集。詠んだ人は天皇や柿本人麻呂ら優れた万葉歌人、詠み人知らずの一般人など分け隔てなく並ぶ。ここから100首を選び、全4巻(各上・下)の8軸の絵巻にしたものを、今回1冊の絵本にして刊行した。各首に読み下し文、万葉仮名表記と意訳、世界に発信すべく英訳も添えた。
現在の元号「令和」の典拠である「梅花の歌三二首 序を併せたり」を皮切りに「万葉びと」の自然観、愛、想い、草花、のテーマで紹介する。
秋の七草につながる山上憶良の歌「萩の花 尾花 葛花 瞿麦の花 女郎花 また藤袴 朝貌の花」の歌には、柔らかな花の絵が添えられる。その右頁には「秋風は涼しくなりぬ馬並(な)めて いざ野に行かな萩の花見に」(よみ人知らず)の歌がある。憶良の歌の花を眺める馬上の人の姿を表現。2つの歌と絵を関連させて楽しめる。
本書の元となった4巻の絵巻は10年かけて制作された。奈良時代の人の心や美しい自然が、情緒豊かな水彩画で蘇る。
教育家庭新聞 健康・環境・体験学習号 2023年2月20日号掲載