学校、地域、企業や社会の様々な場面で、SDGsに向けた取組がすすんでいる。しかし地球環境に与える負荷をこれ以上増やさないための努力は、一人ひとりの自覚と主体的な行動が欠かせない。最近の海洋汚染問題で関心が高まっているプラスチックの廃棄問題だが、プラスチック製品の一つであるペットボトルのリサイクルについて、サントリーグループ(以下サントリー)は「水平リサイクル」の取組などでサステナブル化を推進。「ボトルは資源!」と意識向上を呼び掛けている。その取組から、学校教育が果たす役割を考えた。
持続可能な社会の実現に向けてサントリーは2019年「プラスチック基本方針」を発表し、「2030年までにグローバルで使用するすべてのペットボトルの100%サステナブル化」を宣言。使用する全ペットボトルの素材を、リサイクル素材と植物由来素材に切り替え、化石由来原料の新規使用をゼロにするという。100%サステナブル化を推進するための仕組みのひとつが「水平リサイクル」だ。
水平リサイクルとは回収したペットボトルからペットボトルを再生するもので、「ボトルtoボトル」(「BtoB」)とも呼ばれ、最近10年ほどの動き。以前は回収したペットボトルはトレイ、シート、繊維などのペットボトル以外の素材に生まれ変わり再利用されていた。新たなペットボトルには新たな化石由来原料を使わなければならない。これに対しBtoBなら新たな化石由来原料を使わず、ペットボトルを原料にすることによりCO2排出量を約60%削減できる環境にやさしい仕組みだ。
2011年にサントリーは国内飲料業界で初めて、ペットボトルのBtoBメカニカルリサイクルシステムを構築。翌年には回収ペットボトルから高品質の再生PET樹脂100%使用のペットボトルを導入。水平リサイクルの取組が始まった。その結果、同社のサステナブルボトルの使用率は、日本全体の15・7%を上回る37%。今年は50%強が目標だ。「100%サステナブル化」も大きく前進しそうだ。
今年3月からサントリーの全ペットボトル商品のラベルに印刷されているのが「ボトルは資源!サステナブルボトルへ」のロゴマーク=写真=。ペットボトルはルールを守って分別・回収されることで、何度でも循環・使用できる「資源」であることを広く社会に呼びかけることが目的だ。
また同様の主旨で10月からは新たなテレビCMが開始。稲垣吾郎さん、草彅剛さん、香取慎吾さんがペットボトルに「君たちは、ゴミじゃない。資源だもんね」と語りかける。優しく心温まる内容で、リサイクルへの共感と、ボトルとの再会を想起させる。
実効ある水平リサイクルには、質の高いペットボトルの回収が欠かせない。リサイクルの際には、ボトルに飲料を残さず飲み切る、ラベル・キャップを外すなど、ひと手間の行動が重要だ。
現行の学習指導要領の前文は「持続可能な社会の創り手」を育成することを学校教育の目的の一つに掲げている。地球環境や資源、リサイクルなどの今日的テーマは喫緊の課題だ。将来の子供達に負の遺産を背負わさないために、学び、行動することが求められる。
若者の環境問題への意識は高く「気候変動に関する世論調査」(内閣府2021年発表)では18歳~29歳の75%が「関心がある」と回答。サントリーをはじめ若者対象の出張授業など企業のSDGsの分野での活動にも注目したい。子供たちの豊かな学びのため学校は、企業と連携し教科書にない情報や活動に触れさせることが有効だろう。
教育家庭新聞 健康・環境・体験学習号 2022年11月21日号掲載