文部科学省は2022年度「子供の読書活動推進に関する有識者会議(第4回)」を9月30日に開催した。
同会議では、子供の読書活動推進に関して、今年9月に子供たちへの意見聴取を行った。座長の秋田喜代美氏(学習院大学文学部教授)によると、子供の読書活動推進に関する有識者会議において「子供たちの声を直接聞く初めての試み」。
有山裕美子委員が勤務する軽井沢風越学園(長野県)の学校図書館は3万6000冊の蔵書で児童生徒がゆったりとした空間で読書ができる。国語の授業では「読書家の時間」(自分の興味や読書のレベルに合った本を読む)、「作家の時間」(様々なジャンルの題材を選んで書く)、「言葉の時間」(漢字の学習や言語事項の学習)で構成され、読むことと書くことの密なつながりを意識した取組を行っている。
同学園の小学校3年生~中学3年生の60人にアンケートとインタビューを行い、「本を読みたくなる」条件について分析した。環境面では「蔵書の充実」「じっくり読書ができる静かな環境」「すぐそばに本があること」を求めている。読みたくなる要因については全学年が「暇な時」と回答。読書時間の確保が重要であることが伺えた。また悲しい時など気分転換や心を落ち着かせるためにも読書が役立つこと、「知りたい」と思う気持ちも要因となっている。読書会などのイベント等、読書に親しむきっかけづくりも重要だった。
「(公共の)図書館をさらに使いたくなる」条件も尋ねた。蔵書の充実は必須で、マンガやDVDも挙げられた。特に中学生など年齢が上がると自習室の機能が求められる。また図書館のサービス面だけでなく、自分自身の図書館の利用の方法や読書への心構えといった記述も多かった。
富永香羊子委員(千葉県市川市教育委員会学校教育部指導課長)は、市川市公立小学校の図書委員会代表児童12人(5、6年生)、公立中学校図書委員会代表生徒6人(1~3年生)に、いずれも座談会形式でインタビューを行った。
小学生に本をもっと読みたくなるために必要なことを聞いた。「教室にも本があると良い」「本の紹介」「本の良さを伝える」という回答や、図書委員会で本の企画を考える案も。学校図書館を使いやすくするには「本を整理する(探しやすくなる)」「間違えないで正しい場所に返す」など。
中学生が本を読みたくなるのは「暇な時」「時間がある時」「何か調べたい時」。読みたくなる要因として「授業で学校図書館をもっと使う(小学校ではよく使っていた)」という意見があった。市川市が長年学校図書館活用に積極的に取り組んできた背景がある。
小・中学生で共通した回答もあった。「(公共)図書館をいつも使いたくなるためにはどんなことが必要か」では、地域の図書館が「広すぎて探せない」として、「レファレンスカウンターが入口にあると良い」「本がある棚までナビゲートするアプリ」「本の場所を案内する人型ロボットがいると聞きやすい(大人の司書に尋ねにくい)」といった声や、ヒーリング音楽がかかる場所や、ソファーやハンモックなどの環境面、ショート動画での本の説明を求める声もあった。
小学校1年生にも地域の図書館について尋ねた。「遠いのでおうちの人と一緒でないと行かれない」という回答があり、保護者への啓発が求められる。なお中学生からは保育園や幼稚園の「お誕生日会」に出張し、園児と保護者へ働きかける、といった案も出されていた。
会議では他に「図書館におけるDXについて」野末俊比古氏(青山学院大学教育人間科学部教授・図書館長・アカデミックライティングセンター長・革新技術と社会共創研究所副所長)、「小中高校生の不読率について」濵田秀行氏(群馬大学共同教育学部教授)の発表があり、著作権、Z世代にとってのDXやプライバシーに関する意識の特徴について、また文献の探し方についての教材はあるが、「文献をいかに読み解くかについての教材がない」等、活発な質疑応答や意見交換が行われた。同会議の議事録も後日公開される。
教育家庭新聞 健康・環境・体験学習号 2022年10月17日号掲載