世界の美術作品をヒントにした工作等を体験し、美術を楽しみ、味わえる一冊。著者は府中市美術館の学芸員。鑑賞と制作の両方を体験できる展覧会に取り組む。
画家ルネ・マグリットの『大家族』は、宇都宮美術館にある作品で、鳥の中に青空が広がる「あべこべ」の世界が表現される。この作品の体験では、傘の中に虹の空が広がる「あべこべ」を描く。2枚の画用紙を「絵を描く用」「傘を切り抜く用」として使い、不思議な絵画を制作できる。
工作の仕方も、難易度や準備物とともに具体的に示す。フランスのシャルトル大聖堂をもとにつくる「ステンドグラス・キャンドル」は、色づけした透明ビニールと切り抜いた黒画用紙を、空き瓶に巻いて作る。ライトを中に入れれば完成。
その他、ボッティチェリ『ヴィーナスの誕生』で、紙皿を貝に見立てた工作や、レオナルド・ダ・ヴィンチ『モナ・リザ』で福笑いも楽しめる。
現在の美術教育は、工作や絵を描くだけでなく鑑賞にも力点が置かれるため、大いに参考になる。小学校中・高学年向け。
教育家庭新聞 健康・環境・体験学習号 2022年10月17日号掲載