(一社)日本教育情報化振興会(JAPET&CEC)が主催する、2022年度 情報教育対応教員研修全国セミナー「主体的に調べること・読むことを、日常の中に~1人1台端末という環境はなにをもたらすのか」が8月23日、オンライン開催された(協力:ポプラ社)。
JAPET&CEC会長・山西潤一氏は開会の挨拶で「GIGAスクール構想の推進により配備された1人1台端末を、いかに日常的に活用するかが喫緊の課題」と語った。本セミナーでは帝京大学教育学部教授の鎌田和宏氏、岐阜聖徳学園大学DX推進センター長・教育学部教授の芳賀高洋氏が講演。ポプラ社が提供する『MottoSokka!(もっとそっか!)』の2つのサービス『Yomokka!(よもっか!)』『Sagasokka!(さがそっか!)』の活用事例が紹介された。
▽帝京大学・鎌田和宏教授の講演テーマは「1人1台端末が広げる主体的な学び」。GIGAスクール構想により、1人1台端末は令和の学びの「スタンダード」となった。豊福晋平氏(国際大学)は、“今は1人1台端末の日常文具的な活用や、情報密度を数百倍にする段階で、その先に質的転換が訪れる”と示している。「情報密度を数百倍にする」点に注目すると、これまでアナログで培った知・教育方法も必要になってくる。
今後重要になってくるのは、子供たちの主体的な学びのために、ICT環境やツールの活用について取り組む情報教育と、情報自体の扱い方や探究プロセスに関する知見、メディアの特性に合わせた活用スキルがある学校図書館等が、コラボレーションし、1人1台端末が広げる主体的な学びを具現化させていくこと。子供の成長過程でアナログとデジタルがどう融合すれば良いか今後見守る必要があると話す。
▽東京都荒川区立第一日暮里小学校は、電子書籍サービス『Yomokka!』の活用事例を紹介。児童の読書活動が活発な同校では、昨年9月にYomokka!を導入したところ、児童の平均読書数の全体の底上げにつながったという。「紙の本を基盤に、Yomokka!で読書の幅を広げた」。(白井一之校長)。読書数全体のうち、Yomokka!による読書が占める割合は2~3割。
▽長野県高森町立高森北小学校・高森町子ども読書支援センターの宮澤優子氏は『Sagasokka!』の中学校での活用を紹介。授業中1人1台端末ですぐに百科事典を調べられる良さ、データベースの検索と検索エンジンの違いなど、現場の実際の様子が紹介された。
▽岐阜聖徳学園大学 DX推進センター長の芳賀高洋教授による講演では、デジタル技術の“善き使い手”を目指す学び「デジタル・シティズンシップ」について解説。デジタル・シティズンシップの理念に基づく1人1台端末の活用は、学びを活性化させ、加速させるものだという。
岐阜市教育委員会の取組を紹介した。今年7月に市内全小中学校に配布した文書『タブレット端末の責任ある活用』は、タブレット端末活用ガイド(利用規約)。デジタル・シティズンシップの理念に基づくもので「~しない」という禁止ルールではなく、「学習に積極的に活用しよう」「健康に留意した使い方をしよう」といったホワイトリスト型のもの。解釈の余地があるガイドラインとし、教師・保護者・子供が自分ごととして「考えることを促す」ことも重要なポイントだ。よりよい扱い方を皆で考え、共有していく。
■日本デジタル・シティズンシップ教育研究会 https://www.jdice.org
教育家庭新聞 健康・環境・体験学習号 2022年9月19日号掲載