2012年発行の前作『糸子の体重計』は、日本児童文学者協会新人賞受賞作。
その後を描く本作では、6年生になった糸子と同級生の視点から、悩み、うらやみ、ときにぶつかる姿を描く。
細川糸子は、おいしいものを食べるのが大好きな元気少女。盲腸で入院している間に転校生の日野恵がやってきた。恵は、なぜか糸子と親友になろうとしてきて、糸子は疲れてしまう。「迷惑だっていえばいいのに」と町田良子に言われ「いいたい。いいたいけど、そんなこといえっこない。だって、いったら日野さんを傷つけちゃうし」――。
転校すれば新しい自分になれると思っていた恵。言葉で伝える大切さに気づき、自分探しをはじめる町田良子。良子に憧れる気持ちに気づき、うろたえる坂巻まみ。母親とすれちがう滝島径介。思春期の瑞々しい感情が表現される。
5人は考えすぎたり落ち込んだりしながら卒業式を迎える。未来を考えるとわくわくする糸子。「あたしたちは、案外強い。案外タフで、それで案外ずうずうしい」。
教育家庭新聞 健康・環境・体験学習号 2022年8月15日号掲載