運動指導において「体系的に唯一正しい動き」を決め、欠点を指摘するだけの指導になっていないだろうか。著者が専門とする運動学の理論から、指導の際に直面する問題を紹介する。
例えば「自転車に乗る」とは、動的なものを動かすことである。歩くときは不動の地面の上だが、自転車はハンドルもペダルも動き、即興としてバランスを取らねばならない。また「水泳」では、腹筋が弱い低学年の児童は浮いている姿勢から身体を直立させられず、溺れそうになる。子供を対象とした指導には、このような難しさがある。
その他、長なわとび・ハードル走・走り高跳び等の指導事例を取り上げ、運動指導では「どのようなレベルの動き方を学習目標として設定すべきか」「どのような学習の道筋を作るか」などを解説。指導内容の明確化・体系化がされている学習指導要領を検討し、指導方法の画一化への懸念も示している。
中心となる読者対象は、小学校教員や中学・高校の体育教員。子供に寄り添った運動指導を実現したい。
教育家庭新聞 健康・環境・体験学習号 2022年8月15日号掲載