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「子ども大学くにたち」が本開校

2022年7月25日

「子ども大学」とは2002年にドイツで誕生した、児童が各界の専門家から大学レベルの授業を受けるプロジェクト。「NPO法人子ども大学くにたち」は2019年にプレ開校を行い、コロナ禍においても出前授業や講演会などを行ってきた。そして延期していた本開校式および第1回授業が6月25日、国立学園小学校(佐藤純一校長)で行われた。

子ども大学くにたち(CUKu)開校記念特別講演で講師を務めたのはノーベル化学賞受賞者の白川英樹氏と、俳優で国連開発計画親善大使の紺野美沙子氏。会場に集まった小学4年生から6年生の児童に向けて講義を行った。

ノーベル化学賞受賞者 白川英樹氏
「数学嫌いだから文系」に疑問

観察することの大切さを教える白川氏

観察することの大切さを教える白川氏

白川氏は「私の歩んだ道~子どものころに学んだこと・考えたこと~」をテーマに語った。小学生の頃から理科が大好きだった白川氏は、中学生になると昆虫採集や植物採集に励むようになり、高校ではラジオを組み立て、海外からの放送に聞き耳を立てていた。

野山を駆け回る中で自然を観察する力も養われていったようだ。中学時代に授業で桜の葉を写生した際に一人だけ葉のつけ根の部分にある蜜腺が描けているとして先生にほめられ、自分でも気づかないうちに観察力がついていたことに驚いたという。

中学校の理科で忘れられない思い出が、先生が質問を受け付けるというので「どうして雲は下に落ちてこないのか」という質問をしたところ、「雲をつかむような質問だ」と笑ってごまかされてしまったこと。後に雲が落ちない理由は簡単に説明できるものでないとわかったが「答えが分からないのならば一緒に考えて欲しかった」。

幼い子供がさまざまなものに興味を示すように、その好奇心を大人になっても持ち続けてほしいと語る白川氏。世の中は人間を文系と理系に分けたがるが、数学が嫌いだから文系を選ぶなど、苦手なものを避けるという理由で進路を決めるのは間違っているのではないか、と疑問を投げかけた。

俳優・国連開発計画親善大使 紺野美沙子氏
恵まれた環境を知り責任を

紺野氏はSDGsも交えて語った

紺野氏はSDGsも交えて語った

紺野氏はカンボジア、ガーナ、モンゴル、タンザニアなど多くの国を訪問し、「途上国で見たこと感じたこと」と題して子供たちに伝えた。

「夢を実現させるのは難しいかもしれないが、その夢に向かって努力することを忘れないで」と子供たちに語りかける紺野氏。日本の若者は自己肯定感が低いとされるが、人間には良いところも悪いところもある。「自分を好きでいてほしい」という言葉を心に留め、自分にしかない良いところが必ずあるのでそれを見つけるように、とする。

地球の人口は795000万人、そのうち約半数が発展途上国で暮らしている。日本の子供は中学、高校と進んでいくが、世界には小学校にも通えない子供たちが5900万人もいる。兄弟の面倒を見たり、水汲みなどの理由で学校に通えない子供たち。自分の国の言葉を読むことも書くこともできず、簡単な計算もできない状況では、大人になってもきちんと収入を得る仕事に就くことは難しい。この圧倒的な格差を埋めるために、国連では世界中の途上国でさまざまなプロジェクトを展開している。

生まれてくる国や地域は選べないが、それにより圧倒的な格差が生じる。「自分が恵まれた環境にいて、それがどんなに素晴らしいことかを改めて感じ、だからこそ格差や貧困に対する責任がある、ということを知ってほしい」と語った。

2022年第2回「子ども大学くにたち」は11月に開催予定。講師にラグビーチーム「東芝ブレイブルーパス東京」の選手や日本パラリンピック委員会委員長の河合純一氏を迎えて行われる。

教育家庭新聞 健康・環境・体験学習号 2022年7月18日号掲載

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