ヨーロッパの国境から、歴史、民族問題、観光、多様性、鉄道などのテーマを掘り下げ、その地誌をひも解く。著者が自ら越えた国境から特徴的なものを選りすぐり、体験と考察をまとめた。
「EUを象徴する国境を訪ねる」では、ドイツ・フランス国境を取り上げ、アルザス人・フランス人・ドイツ人について考える。また、旧東西ドイツ、ドイツ・チェコ国境、北イタリアの言語境界、アウシュヴィッツ、多文化都市ブラティスラヴァ、バルカン半島を取り上げ、コラムも充実。
現地でしから得られない経験や理解は貴重だ。「長い期間にわたってあり続けている国境もあれば、最近になって引かれた国境もある。現場で目にする景観は多岐にわたり、国境の歴史や人々の暮らしについての物語は果てしなく広がる」。豊富な写真と共に考えを深めながら“国境への旅”にいざなわれる。
同じ国境でも、かつて戦場となった場が、EU域内となって通勤や通学で行き来する様子は、ヨーロッパ特有のものだろう。地理・歴史の授業に活かしたい一冊。
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2022年7月4日号掲載