日本のアンデルセンといわれる久留島武彦の童話名作選。原作は昭和9年出版『童話 久留島名話集』に掲載された『虎の子の大発見』。
いたずら好きのトラの子ウーちゃんは「勝手に外へ行ってはいけない」とお母さんに言われているのに、こっそり「こわい人間」を見に出かける。
草むらの中をそろそろ進むと、力強い足音が聞こえてくる。「人間だ! 人間がやってきたにちがいない!」
しかし、現れたのは牛。「おいおい、わたしはウシだよ」。人間に殺されそうになった、と牛はあたふたと逃げていくが、ウーちゃんはますます人間が見たくなる。さらに豚や鶏も口々に、「きみもこんなところにいるとあぶないよ」。そして、しわだらけで見るからに弱そうな動物に出会い、ウーちゃんは聞く。「このへんで人間というやつを見なかったかい?」。実はそれが人間で――。
久留氏は口演童話活動家として6000以上の幼稚園や小学校を訪れた。聞いてわかりやすい言葉は、読み聞かせに最適だ。『すずむし』(黒井健/絵)も同時刊行。
教育家庭新聞 健康・環境・体験学習号 2022年4月18日号掲載