東京大学発達保育実践政策学センター(東大Cedep)とポプラ社が2019年8月にスタートした共同研究。2月28日にオンラインで行われたシンポジウム「豊かな絵本・本・メディア環境の実現に向けて~『子どもと絵本・本に関する研究』のこれまでの成果から~」では、子供にとっての豊かな絵本・本メディア環境を実現するための提言が行われた。
①家庭における絵本・本・メディア環境の実態調査、②紙の絵本とデジタル絵本の比較/メディアの種類と想像力の関連性について研究を行っている。
2021年7月中旬の調査では、3~5歳児の家庭での読書時間は(保育施設等で読む時間を除く)平日は平均12・7分、休日は15・2分で、1日の読書時間が10分以下の子供は過半数。2006~2008年の同年齢は平均25~28分程度(NHK調査より)で、読書時間は減少傾向だ。
「読書」「スクリーン視聴」「活動的遊び」「創造的遊び」「学習勉強」の各活動にかける時間の長さと、非認知能力(DSQ:総合的困難さ)・リテラシー(かな/カナの読み)の関連では、「読書」のみが非認知能力とリテラシー双方に良い影響があること、またスクリーンタイムの負の効果は限定的で、非認知能力へのネガティブな影響もないことがわかった。
紙の絵本とデジタル絵本との比較実験として、現在は絵本・本が子供の想像力や創造性を育むことについての実験に取り組んでいる。
家庭以外で絵本・本、メディアに触れることのできる場として、園、学校や地域の公立(公共)図書館に着目する。
園の絵本・本環境の実態は、蔵書数、年間予算共に格差がある。例えば認可保育所では、5万円未満のところが48・6%ある一方、30万円以上予算がある園も1・5%ある。園の絵本・本環境への提言として、①蔵書数や蔵書構成の目安、基準値の策定、またそれを達成するために②蔵書数・蔵書構成の目安・基準値に合わせた財政支援が必要と考える。
公共図書館の取組としては、CDやDVDは利用できるものの、タブレット端末が利用できる施設はわずか。デジタルコンテンツへのアクセスビリティも保証する必要がある。地域システムとして子供のメディア環境をどのように扱っていくか議論が求められる。
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指定討論では、学習院大学教授で東京大学名誉教授の秋田喜代美氏、東京大学大学院教授でCedepセンター長の遠藤利彦氏が登壇。登壇者にポプラ社・千葉均社長も加わりディスカッションも行われた。
詳細=www.cedep.p.u-tokyo.ac.jp/event/39258/
教育家庭新聞 健康・環境・体験学習号 2022年3月21日号掲載