第53回全国小中学校環境教育研究大会(東京大会)および第57回東京都小中学校環境教育研究発表会が、11月19日にオンラインにて開催された。主催は全国小中学校環境教育研究会、東京都小中学校環境教育研究会。
東京都小中学校環境教育研究会・關口寿也会長、鈴木元研究部長の発表テーマは「持続可能な社会づくりのための環境教育の推進~つなげる環境教育の輪~」。全国の教員の環境教育の授業づくりに役立つよう、「学びの地図」の作成に取り組む。
自然のものを身近に感じる機会が少ない東京の子供たちが、無意識に自然本来の良いものを選べるようするにはどうしたらよいのか。
「自分たちの育てた綿×自分の思いが加わったエコなものづくり」は、カリキュラム・マネジメントの視点でつないだ「環境教育×家庭科」の授業。素材を一から作ることで素材について見直し、エコバッグが本当にエコなのかを考える。
「環境教育には明確な答えがなく、だからこそ子供たちと一緒に考える。教員が考えたデザインに沿いつつ子供たちが自ら考えることが大切」と鈴木研究部長は話す。
長野県飯田市立上村小学校の北原文雄校長による発表は「学校と地域が協働するESD for SDGs ~山あいの“小さな学校”の世界につながる“大きな挑戦”~」。日常生活とSDGsを関連づける取組は2019年から。2020年8月には、上村の自然に親しむ「KGC自然体験」を行い、ジオパーク学習、自然散策、工作などを体験した上で、「上村のために自分たちができることは何か」を考え、「下栗いも しいたけ 販売活動」に発展していった。
北原校長は「本校と東京の施設で“下栗いも”をそれぞれ育て、比較し、交流する活動も行っている。興味のある方はぜひ連絡を」と呼びかけた。
北海道羅臼町立羅臼小学校(西田威嗣校長)は「知床らうすの環境教育」を佐藤英雄教頭が発表。
ユネスコの「世界自然遺産」に認定されている知床・羅臼町では、若い世代の人口流出が課題だ。3年前の児童アンケートの「羅臼が好きか」「将来住みたいか」という質問に、過半数が「そうは思わない」と回答していた。
そこで羅臼の良さを実感できる体験を重視。従来の「総合的な学習の時間」における「知床学・海洋教育学」の授業を見直した。幼小中高一貫教育総合部会で、幼稚園~高等学校の15年間の系統性を話し合った。環境学習と各教科と関連を図りながら、地域の教育資源を生かしたカリキュラムを作成して実践した。
2020年に6年生を対象に再アンケートを行ったところ、100%の児童が「羅臼が好き」と回答。その理由を「自然が多くたくさんの生き物に囲まれ、町民一人ひとりが優しいから、羅臼は私の自慢のふるさとです」と書いた児童もいた。
「ふるさとの川 山科川を見つめて」を発表したのは、京都府京都市池田小学校(青山剛校長)。溝脇孝教頭は、「環境について学ぶ時、まず身近なところに目を向け、そこから広い視野で環境に興味を持てるように指導するために、山科川に目を向けた」と話す。
児童はまず「なぜ(自分たちが)山科川を学習するのか?」を考えることから学習をスタートさせる。山科川を題材にした学習は同校で長年取り組んでいるものであり、その成果を紹介した。
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以上4校の発表および、誌上発表4校が全国大会紀要に詳細を掲載。
また2つの講演が行われ、国連広報センター・根本かおる所長、国連大学サステナビリティ高等研究所・イヴォーン・ユー研究員が登壇。大会後半では講演の2人の講師を交えて、研究会会員の教員とのパネルディスカッションが行われた。
■全国小中学校環境教育研究会 HP=http://kankyokyoiku.jp/
教育家庭新聞 新春特別号 2022年1月1日号掲載