教員を対象にした「リサイクルの現在について学ぶ」研修会が2021年11月20日、東京・荒川区の「あらかわリサイクルセンター」で開催された。参加者は資源の中間処理の現場を見学し、生活に欠かせない飲料・食品の容器包装のリサイクルの現状や、リサイクル率が94%に達するスチール缶のリサイクル事情について学んだ。(主催=スチール缶リサイクル協会、日本製缶協会、公社・日本缶詰びん詰レトルト食品協会、後援=東京都小中学校環境教育研究会、協力=荒川区、教育家庭新聞社)
あらかわリサイクルセンターは、荒川区内で回収された資源(びん、缶、ペットボトル、食品トレイ)の破砕、圧縮等の中間処理施設。学習者の見学の受け入れや、リサイクルの工房・教室等も開催し、資源循環型社会の構築に向けた活動拠点となっている。施設の1階で中間処理を行い、その様子を2階から見学できる。
参加者は、磁石の力でアルミ缶とスチール缶を分別する機械、食品トレイが細かく砕かれる様子、ペットボトルの処理などを見学。びんは、手作業で色別に分別されるという。400本分のスチール缶のプレス(資源がつぶされて、まとまった塊)や、圧縮された食品トレイなどの展示物に触れながら体験的に理解を深めた。
荒川区の小学校全24校の4年生は、毎年同施設で見学および環境学習を行っている。施設内には、小学生に分かりやすいパネル掲示や、リサイクル製品などの展示が充実。教員にとっては、児童への指導面でも参考になる。
続いて、専門家による2つの講義が行われた。
荒川区環境清掃部リサイクル推進専門監・リサイクルセンター係長事務取扱の泉谷清文氏は、普段見学に訪れる小学生へ説明している実際の内容をもとに、荒川区のごみの流れや現状、児童が取り組みやすいリサイクルの方法などを紹介。
燃やすごみは清掃工場で燃やし灰にして、燃やさないごみは中間処理施設で殆ど資源化され、残りが砕いて埋立処分場へ運ばれる。しかし、東京港にある埋立処分場の容量はあと50年分しかない。このままでは、現在の小学4年生が60歳になる頃には、埋立処分の場所がなくなるという。
また、1人が1日当たりに出すごみの量は約549グラム。Mサイズの卵約9個分である。「小学生にごみを減らす必要性が伝わりやすいように、具体的な数字や例示を使用した説明を心掛けている」という。
リサイクルさえすれば大量消費しても良いわけではない。参加者から「子供たちにどう伝えているのか」との質問が出た。泉谷氏は「3R(リデュース・リユース・リサイクル)を重視している。3つのRには順序があり、『リデュース=ごみになるものを減らすことがまず重要。必要以上にものを買い過ぎないようにしましょう』と子供たちに説明している」と話す。
スチール缶リサイクル協会専務理事の中田良平氏は、スチール缶の種類や製造方法、環境負荷低減の取組や、軽量化への技術開発について解説。
スチール缶は鉄99・9%から成る「高級鋼」。缶の板厚を薄くしたり、缶の蓋(上部)の面積を小さくするなどして、使用する材料を減らす「リデュース」に取り組む。1970年代に約40グラムだった200ミリリットルの飲料用スチール缶は、現在は約30グラムまでになった。
また、スチール缶のリサイクルによって再生されるのはスチール缶に限らず、鉄製品全般である。鉄が「何にでも」「何度でも」生まれ変われる特徴があるからできることだ。しかし、このリサイクルの仕方はあまり知られていないという。さらに、スチール缶は最寄りの製鉄所で再資源化されるため、物流によるエネルギー使用量が低減できる良さもある。
さまざまな容器包装に関する環境保全への取組として「アルミ缶、ペットボトル、ガラスびん、段ボールなどの3Rの目標とその達成状況」などについても紹介した。
参加者からは「なぜリサイクル率の高いスチール缶は社会で広まらないのか」という質問があった。中田氏は「スチール缶は頑丈であるなど、内容物保護性が高い一方、材料費がかかる。薄利多売が要求される飲料製品では、コストや再栓性で優位なアルミ缶やペットボトルが広まる結果になった」と語る。
研修会の最後には、参加者が5人ずつのグループに分かれて、意見交換が行われた。
見学や講義の内容を受け、次のような意見が出た。
※ ※ ※
参加した教員は、多様で複雑な現状があることや、「リサイクルできる」ことによる新たな価値観を育てることの難しさを語り合った。社会の企業・消費者などの立場や、さまざまな価値基準がある中で、リサイクルの意義を再確認する研修会となった。
教育家庭新聞 新春特別号 2022年1月1日号掲載