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回収された「資源」の行方 子供たちの学びにつなげる~教員対象「リサイクルの現在について学ぶ」研修会

2022年1月18日

教員を対象にした「リサイクルの現在について学ぶ」研修会が2021年11月20日、東京・荒川区の「あらかわリサイクルセンター」で開催された。参加者は資源の中間処理の現場を見学し、生活に欠かせない飲料・食品の容器包装のリサイクルの現状や、リサイクル率が94%に達するスチール缶のリサイクル事情について学んだ。(主催=スチール缶リサイクル協会、日本製缶協会、公社・日本缶詰びん詰レトルト食品協会、後援=東京都小中学校環境教育研究会、協力=荒川区、教育家庭新聞社)

中間処理施設で缶はスチール缶とアルミ缶に分別・圧縮される。左下の塊が圧縮されたプレス

現場に触れ体験的に理解

あらかわリサイクルセンターは、荒川区内で回収された資源(びん、缶、ペットボトル、食品トレイ)の破砕、圧縮等の中間処理施設。学習者の見学の受け入れや、リサイクルの工房・教室等も開催し、資源循環型社会の構築に向けた活動拠点となっている。施設の1階で中間処理を行い、その様子を2階から見学できる。

参加者は、磁石の力でアルミ缶とスチール缶を分別する機械、食品トレイが細かく砕かれる様子、ペットボトルの処理などを見学。びんは、手作業で色別に分別されるという。400本分のスチール缶のプレス(資源がつぶされて、まとまった塊)や、圧縮された食品トレイなどの展示物に触れながら体験的に理解を深めた。

荒川区の小学校全24校の4年生は、毎年同施設で見学および環境学習を行っている。施設内には、小学生に分かりやすいパネル掲示や、リサイクル製品などの展示が充実。教員にとっては、児童への指導面でも参考になる。

3つのRの順序とは

専門家による講義

専門家による講義

続いて、専門家による2つの講義が行われた。

荒川区環境清掃部リサイクル推進専門監・リサイクルセンター係長事務取扱の泉谷清文氏は、普段見学に訪れる小学生へ説明している実際の内容をもとに、荒川区のごみの流れや現状、児童が取り組みやすいリサイクルの方法などを紹介。

燃やすごみは清掃工場で燃やし灰にして、燃やさないごみは中間処理施設で殆ど資源化され、残りが砕いて埋立処分場へ運ばれる。しかし、東京港にある埋立処分場の容量はあと50年分しかない。このままでは、現在の小学4年生が60歳になる頃には、埋立処分の場所がなくなるという。

また、1人が1日当たりに出すごみの量は約549グラム。Mサイズの卵約9個分である。「小学生にごみを減らす必要性が伝わりやすいように、具体的な数字や例示を使用した説明を心掛けている」という。

リサイクルさえすれば大量消費しても良いわけではない。参加者から「子供たちにどう伝えているのか」との質問が出た。泉谷氏は「3R(リデュース・リユース・リサイクル)を重視している。3つのRには順序があり、『リデュース=ごみになるものを減らすことがまず重要。必要以上にものを買い過ぎないようにしましょう』と子供たちに説明している」と話す。

コスト面の課題も

スチール缶リサイクル協会専務理事の中田良平氏は、スチール缶の種類や製造方法、環境負荷低減の取組や、軽量化への技術開発について解説。

スチール缶は鉄999%から成る「高級鋼」。缶の板厚を薄くしたり、缶の蓋(上部)の面積を小さくするなどして、使用する材料を減らす「リデュース」に取り組む。1970年代に約40グラムだった200ミリリットルの飲料用スチール缶は、現在は約30グラムまでになった。

また、スチール缶のリサイクルによって再生されるのはスチール缶に限らず、鉄製品全般である。鉄が「何にでも」「何度でも」生まれ変われる特徴があるからできることだ。しかし、このリサイクルの仕方はあまり知られていないという。さらに、スチール缶は最寄りの製鉄所で再資源化されるため、物流によるエネルギー使用量が低減できる良さもある。

さまざまな容器包装に関する環境保全への取組として「アルミ缶、ペットボトル、ガラスびん、段ボールなどの3Rの目標とその達成状況」などについても紹介した。

参加者からは「なぜリサイクル率の高いスチール缶は社会で広まらないのか」という質問があった。中田氏は「スチール缶は頑丈であるなど、内容物保護性が高い一方、材料費がかかる。薄利多売が要求される飲料製品では、コストや再栓性で優位なアルミ缶やペットボトルが広まる結果になった」と語る。

新しい価値観を育む意見交換会を実施

普段の授業を通じて子供たちに伝えたいことを話し合った

普段の授業を通じて子供たちに伝えたいことを話し合った

研修会の最後には、参加者が5人ずつのグループに分かれて、意見交換が行われた。

見学や講義の内容を受け、次のような意見が出た。

  • 消費者が商品を買うとき、値段が安いということは大きな要素。コストがかからない方法へ企業が進むのも理解できる。
  • マイボトルとして水筒を持つようなファッションを生み出せたらよいのではないか。
  • リサイクル時における流通や洗浄までを考えると、何が環境に負荷がかからない方法なのかが複雑。だんだん分かりにくくなっている。
  • 学習指導要領にある「答えのない問題に取り組む」とは、社会のこのような課題を考えることだと感じた。
  • 授業で3Rやリサイクルの重要性を指導する際には、コストや消費者の意識という社会的な課題にも触れたほうがよい。

※  ※  ※

参加した教員は、多様で複雑な現状があることや、「リサイクルできる」ことによる新たな価値観を育てることの難しさを語り合った。社会の企業・消費者などの立場や、さまざまな価値基準がある中で、リサイクルの意義を再確認する研修会となった。

参加者の事後アンケートより

  • (中間処理施設の見学は)初めてではないが、手作業で丁寧に資源の中間処理をする様子は、やはり直接見られて学びがあった。子供たちに見てもらいたく、授業でどのように扱うかを考える機会になった。
    研修会の内容は5年生「総合的な学習の時間」の「環境」で活用する予定。資源の有効な活用とリサイクル、それよりも大切なリデュースやリユースを具体的にどのように実践するか、子供たちと考える。(杉並区立西田小学校主任教諭・秦さやか)
  • 生活の中で回収箱に入れた、(資源ごみの)先の処理を実際に見学できたことが良かった。1つの自治体の取組から様々な視点を持つことができ、改めて3Rの意義を振り返ることができた。
    容器の軽量化や堅固さが日進月歩であること、3Rの推進も技術の裏付け・進歩があればもっと加速度がつくのではないかと期待される。
    気候変動が「待ったなし」の状況になっているのにも関わらず、教育としての環境教育が薄いことを改めて感じた。学習指導要領に明確に位置付け、カリキュラムとして設置することが必要である。(杉並区立浜田山小学校校長・伊勢明子)
  • 中間処理施設では、間近に見ることができ、現場の方々の苦労が分かった。スチール缶リサイクルと鉄素材に関する講義では、説明が的確で、大変よく現状が分かった。
    普段学校では、児童たちに簡易包装を勧めるなど取り組んでいる。(研修会全体を通じて)トータルでリサイクルの是非を考える必要性を実感した。カーボンフットプリントなど、トータルで見た省資源化について考えるきっかけにもなった。(多摩市立連光寺小学校校長・關口寿也)

教育家庭新聞 新春特別号 2022年1月1日号掲載

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