地球的課題である食品ロス削減に向け、行動を起こすきっかけづくりとするためのオンラインセミナー「食品ロス『自分ごと化』イベント」(専修大学主催、公財・東京都環境公社共催)が9月11日開催。記録することで自分の食品ロス量に気付き、画期的な削減効果につながった「ダイアリー調査」の事例、専修大をはじめ全国4大学の学生チームの活動等が紹介された。
「自分で取り組むSDGs・食品ロス自分ごと化―食品ロスダイアリー調査等から」をテーマに、同調査手法によって食品ロスを削減できたという実証実験の結果を発表したのは叡啓大学特任教授・石川雅紀氏。同氏は日本の食品ロスの概要や調査手法について説明、続いて「食品ロスダイアリー」について詳しく紹介した。
日本の食品廃棄物は全体で年間2531万トン、うち600万トンが食品ロス(食べ残し、未利用・直接廃棄、過剰除去)で4分の1を占めている。廃棄物は産業系が1765万トンに対し家庭系は766万トンで半分以下なのに比べ、食品ロス部分をみると産業系は324万トン、家庭系は276万トンで大きな差がない。
家庭からの食品ロスの計測法は主に「ごみ組成調査」と「ダイアリー記録法」でそれぞれ長・短所がある。「ごみ組成調査」は実際に廃棄されたごみ袋を広げて分類するもので、実態が観察できる反面、分類する担当者による主観的判断となりブレが生じること、遺棄世帯との属性が不明であること、人手・費用コストが高いこと等のデメリットがある。同調査による2018年のある自治体の調査結果では、食品ロス全体の4割を過剰除去が占め、食べ残しと未利用・直接廃棄がそれぞれ3割だった。
「ダイアリー記録法」は調査協力者自身が、発生した食品ロスの種類、量、理由等を記録するもので、個人別データで発生理由等の情報が得られる、コストが安価なので大量調査が可能等のメリットがある。しかし記録は自己申告なので過小評価バイアスがかかる可能性がある。
同調査の神戸3回、仙台1回の結果を平均したところ、1軒当たり週1~2回の廃棄で季節変動はあまりなかった。未利用食品で多かったのは、生鮮野菜(39・2%)、生鮮果物(10・4%)で世界的傾向と一致。次いで大豆加工品(8・7%)、パン(6・0%)など。一方で傷みやすい生鮮魚介(1・3%)や魚介加工品は少なく、「単価が高いため計画的に購入・消費していることが考えられる」と分析。生鮮野菜ではトマト、レタス、キュウリといった日常的な野菜が多いことも明らかになった。
調理の計画性との関連では、1軒当り1週間の食品ロス件数をみると「とても計画的」と回答したサンプルでは2・29件だったが「計画的でない」は3・29件。特に未利用品の廃棄では1・7倍だった。
食品ロスの量とダイアリー調査の関連では、調査を続けることで量が減少することに気付いたという。1か月で15%程度の削減効果だったため、記録がより簡便なスマホアプリを開発、3か月続けたところ、未利用・直接廃棄、食べ残し共に量が半減した。
「未利用・直接廃棄は食べ残しより多く、廃棄食品の多くは生鮮野菜・果実だった。しかし食品ロスダイアリーを記録することで発生量は減少する。インタビューすると、自分が思っていたよりたくさん捨てていることに気付かされたと感想があった。見える化されたことで、減らす努力をするという行動につながった」とまとめた。
教育家庭新聞 健康・環境・体験学習号 2021年10月18日号掲載