調べ学習では、本や地域資料、新聞、インターネットからの情報など、多様な資料から必要な情報を見つけ、考えたことをまとめる。教科の学びと共に、こうした情報活用のスキルを身につける実践事例を紹介する。福島県双葉郡富岡町立富岡第二小学校(武内雅之校長)では地域調べを題材に、資料や情報の活用方法を段階的に広げていき、新聞形式にまとめる活動を行った。(公社)全国学校図書館協議会(以下、全国SLA)主催「情報活用授業コンクール」で優秀賞を受賞。
今回紹介するのは同校の4年生3人の児童が取り組んだ実践だ。社会科「特色ある地域と人々のくらし」で2021年1~3月に、全18時間の授業を行った。地域の学習を深めると同時に、調べ学習の基礎を身につけることがねらい。同校の3・4年生は複式学級で、4年生の社会科を担当している小熊真奈美教諭と、図書館支援員の村上美香氏が携わった。
それまでも各教科で調べ学習を行ってきたが、小熊教諭は「児童にとってさまざまな資料から調べることは難しいようだ」と感じていた。そこで今回の実践では“今日は古い町並みを調べよう”といった限定的な調べ学習から、徐々に調べる範囲や自由度を広げていったという。
具体的には、福島県の3つの地方「浜通り・中通り・会津」から、それぞれ1か所ずつ対象となる地域を選び、調べ方の難易度も3段階に分けた。なお児童には学校内で使える1人1台端末が貸与されている。
全体の準備段階として、児童たちが調べたい市町村を選ぶ。その際、県内の市町村が作成しているパンフレットが大いに役立った。小熊教諭が県の観光案内所を訪れて集めたもので、学校図書館の地域資料として活用している。
市町村選びは児童の経験や興味、知りたい気持ちを優先し、「会津」では会津若松市、「中通り」は須賀川市、「浜通り」はいわき市を選んだ。
また、会津の「古い建物や街並み」や「伝統工芸」について、町のパンフレット、ガイドブック、Webサイト等から調べ、「それはなにか」「特徴」の2点に絞り、記録の書き方を指導した。
会津若松市については、Webサイト「ふくしま教育旅行」を閲覧し、他の地域と比べて体験活動が多くできることに気付かせた。6年生が修学旅行で訪れることと関連付け、自分たちが体験してみたいことを楽しそうに話す姿が見られた。
調べるためのWebサイトは、小熊教諭が予めWordに学習に適したWebサイトのURLを貼り、ハイパーリンクで飛べる推薦リンク集を作成、校内LANのフォルダに保存した。児童は個人の端末からフォルダにアクセスし、調べたいページを閲覧した。
はじめに須賀川市のPR動画を視聴し、「須賀川市はどのようにウルトラマンを生かしたまちづくりをしているのか」を学習課題にした。
調べ学習の6つのキーワード「いつ・どこで・だれが・何を・なぜ・どのように」(5W1H)を知らせ、情報カードの書き方を指導。児童は多くの情報を分かりやすく整理することを体感した。
市の公式サイトやさまざまなWebサイトを検索した。ただし情報が多くて絞り切れないことも多く、紙の観光パンフレットの方が、インターネットより早く調べることができたという。
この段階では児童の自由裁量度を高め、各自が好きなテーマを調べる時間も設けた。
市のパンフレットの随所に「フラシティいわき」のロゴが載っていることに気付き、「なぜいわきでフラ(ハワイ)なのか」を学習課題とした。さらに「スパリゾートハワイアンズの歴史」など、各自それぞれでテーマを設定し、調べを進めた。
同市在住の村上氏が、観光パンフレットや歴史資料など多く集めたものが役立った。一般向けの文章で児童には難しい資料は、一斉授業で要点を読み取る。
また公式サイトや歴史マンガ、同市の教育委員会の資料、企業のプレスリリース、地図など多様な資料を活用し、調べ方の幅を広げた。画像検索から、調べたい事柄の公式Facebookに辿り着く場面も。SNSの情報を鵜呑みにしないといった指導も行った。
最後に児童は各自のテーマを新聞にまとめた。
授業全体を通じて調べ学習を繰り返すうちに、児童は学習のプロセスや調べる手法に慣れていった。小熊教諭は「子供たちと調べることの面白さを共有できた。調べ学習へのハードルも下がったようだ」と話す。
教育家庭新聞 健康・環境・体験学習号 2021年8月16日号掲載