ガラスびんの主原料は砂や石灰石。すべて天然素材でできている。洗うことで再利用もできるガラスびんは3Rに適した容器だ。酒や調味料などの容器びんを製造し、国内トップシェア(2020年業界シェア約40%)を占める日本山村硝子は、兵庫県西宮市の市立小学校を対象に環境学習を支援。ガラスびんの環境特性について「ぐるぐるまわるびん」のキーワードで伝えている。
西宮市は2003年12月に全国に先駆けて「環境学習都市宣言」を行った。宣言は同市に関わる全ての人々が協働し、環境学習を通じて持続可能なまちづくりを進めることを目標とした。宣言に伴い、市は企業や学校との連携を推進。同市が創業の地である日本山村硝子は市立の小学校3、4年生を対象にした出前授業を2004年から実施している。
ガラスびんは、3R(リデュース、リユース、リサイクル)に適した特性を持っている。強度や品質は維持したまま軽量化が図られ(リデュース)、内容物の香味を吸着しないなどの特性から、使用後に洗浄すれば繰り返し使える唯一の密封包装容器であること(リユース)、資源ごみとして回収された場合は細かく砕かれ「カレット」となり、再び高温で溶かされ、新しいガラスびんに生まれ変わる(リサイクル)。また主原料は砂や石灰石といった天然素材であり、川や海に流れても長い年月で砂や石に還る。同社独自の指標では、「びんtoびん」の水平リサイクル率も6割を超えているという。
授業ではこうしたガラスびんの優れた特性について、「ぐるぐるまわるびん」というキーワードで子供たちに理解してもらうことを目指している。酒造メーカー、カレットメーカー、金型メーカー、びん用ケースレンタル会社と、びんメーカーである同社が協働。金型からびんが製造され、中身(酒)が詰められ、運ばれ、消費、回収、再生原料化され、再びびんに戻る、といったガラスびんの循環の仕組みについて、子供たちが「びんの気持ち」になって各社のブースを回る。子供たちは金型、びん成型、ラベル貼り、びん洗浄、分別といった体験を通して楽しみながら理解を深めていく。なお、同市は室町時代からの酒どころとして知られている。
ガラスびんを選び、正しい方法で回収に出すことは循環型社会の実現に繋がる。同社では「小学生でも身近に実践できる行動が、社会貢献につながることを伝えたい」としている。
同社の前身である山村硝子の創業者、山村徳太郎氏(1926~1986)は循環型社会の到来を予見し、1973年、家庭ごみとして排出されるガラスびんについて日本で初めて分別回収の実施に成功した人物。同社は創業以来、「循環型社会の実現に貢献する」精神を大切にしてきた。
現在、同市では尼崎市や播磨町などでも小学生を対象にした環境学習を支援している。また尼崎市が開催する環境イベントに出展し、カレットの選別体験やガラスびんを使った工作のワークショップ等を行いながら、ガラスびんの3Rを伝えている。今後は高校生や大学生など社会に出る直前の世代に対し、より現実に即した環境教育の実施も目指している。
教育家庭新聞 健康・環境・体験学習号 2021年7月19日号掲載