「活字の学びを考える懇談会」は2020年6月に設立され、紙とデジタルのバランスのとれた学校教育の実現を目指して活動を展開してきた。その一環として「紙とデジタルの持ち味を活かした学校教育の実現」に向けて、リレー講演「学校教育のデジタル化・子どもの未来」を、(公財)文字・活字文化推進機構との主催で3月16日に開催した。
久里浜医療センターでは2011年からゲーム依存やネット依存の専門外来を受け付けてきた。2018年度内閣府青少年のインターネット利用環境実態調査では、ネット依存が疑われる中高生は、2012年は全体の7・9%、2017年には14・2%となった。
ゲームに関してはWHOが2019年5月にゲーム障害を依存として疾病認定した。その症状は日常の活動よりゲームを優先してしまうなど。
久里浜センターにゲーム障害として訪れる患者の9割が男性で、平均年齢は18歳、その4分の3は学生だ。患者の症例として、高校2年生の男子は、高校入学後にオンラインゲームを覚えたことでゲーム時間が急激に増え、ゲームを始めてから3か月で不登校や昼夜逆転が始まった。ゲーム機を取り上げると暴れるなどし、改善する気配が見られず受診。入院後、少しずつ笑顔が見られるようになり、退院後は友人もでき元気に学校に通っている。
ゲーム依存の治療については周囲の人がコントロールしようとしても、うまくいかないことが多く、自分の意思で少しずつ行動を変えていくように援助する。ゲーム依存を断ち切るのは難しいが、継続的に診ていくことで解決を図るという。
仙台市が実施している生活・学習状況調査では、スマホを「3時間以上使う」「使用しない」、家で勉強を「1時間する」「しない」で4つのグループに分け、数学テストの点数を比較した。
その結果、「家で1時間勉強してスマホを利用しない」子供の平均点数は72点、「家で勉強をしないでスマホを3時間利用する」子供は54点。注目すべきは「家で勉強をしないでスマホを利用しない」子供は63点だが、「家で1時間勉強してスマホを3時間利用した子供」は61点だった。
スマホを3時間以上使った子供は勉強をしたにも関わらず、勉強しない子供より平均点が下がった。理由は睡眠時間の低下にある。スマホの利用で睡眠時間が短くなると、それに比例して偏差値も下がる傾向にある。
スマホを持っている子供の約8割が、勉強しながらLINEの使用など「ながら勉強」をしており、うち半数が勉強中に複数のアプリを切り替えながら利用している。そのため学習時間が長くても平均点に届かないことが分かった。スマホの利用時間を1時間以内に抑え、必要な時にだけ利用することが求められる。
乗り物を使わずに、すべて徒歩で旅行するのは不可能だが、大事なところは自分の足で歩き、目で見て、手で触れて体験することが重要だ。
同様に膨大な情報の中から、デジタルで素早く情報を入手することも大事だが、じっくりと活字の本を読むことで見えてくるものがある。
19世紀アメリカの作家である、エドガー・アラン・ポーのエッセイ集「マージナリア」(本の余白、の意)では、読書家であるポーが、本を読みながらその感想などを本に書き込んでいった。どうしてこのテーマで本を書こうと思ったか、どこで作者が困難にぶつかったかが書かれている。
中高生も、本の余白に文字を書き込むような読書にチャレンジすることを勧める。単に本を読み進めるだけなく、そこに「書く」という行動が挟まることで、考えながら読書を進められる。
教育家庭新聞 健康・環境・体験学習号 2021年4月19日号掲載
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