回答者:斎藤純(川崎市立田島中学校司書教諭)
学校図書館でよく見る光景に、お勧め本の紹介やPOPカード等の、図書館に人を呼び込み、読書好きを増やそうとする展示がある。とはいえ、「読書」はとても天邪鬼な生き物である。どんなに人の心を打ち、良作であっても、人から「あれを読みなさい!」「これがいいから!」と強く勧められるほど、何故か読む気がいつの間にか失せてしまう時もある。
そこでお勧めなのが、あえて館内を離れ、図書委員等の代表生徒を連れ大型書店等で行う「選書ツアー」である。ディスプレイの質感が店によって異なり、演出やPRの上手さなどの個性が見られ面白く、その手法は自館の展示の参考になる。また、生徒が実際に手に取り選ぶことで、メディア等で話題の作品、社会の動向や歴史・文化を反映した作品、明治の文豪が現代風に楽しくデフォルメされた作品など、普段自分では読まないジャンルにも多く出会え、新たな読書の幅が広がる。選定後に「生徒がツアーで選んだ本」としてPRすると、一般生徒からの反響も大きく自然と手を伸ばしたくなる。実際に本校でも「生徒目線で選んだ本だから、普段自分が読まないものでもすごく興味がある」などの声がきかれた。
誰から強制されるでもなく自然と手にした本は、自分の心をくすぐって離さなくなるものだ。時にはその本が自分の肌に合わないこともあるが、そんなハプニングも楽しめるくらいの気概で、「天邪鬼な読書さん」と楽しくつき合っていくことも読書の醍醐味ではないだろうか。
教育家庭新聞 健康・環境・体験学習号 2020年9月21日号掲載